三菱電機、単一AIモデルで複数の音源分離を実現する技術を開発
三菱電機、単一AIモデルで複数の音源分離を実現

三菱電機は8月31日、マイクで収音した混合音から、音源の種類を指定して目的の音を分離・抽出する処理を単一のAIモデルで実現する「タスク汎用音源分離技術」を開発したと発表した。同技術を活用することで、AIシステムが製造現場などで発生する多様な音を正確に聞き分け、複雑な状況を高度に理解することを可能にするという。

複数の音源分離タスクを単一AIモデルで実現

製造現場や公共空間では、機械音や人の声が周囲のノイズに埋もれてしまうことにより、AIによる異常検知や音声操作、現場状況の把握が困難になることがあるという。従来の技術では、分離対象や用途ごとに個別の音源分離モデルを開発する必要があり、現場ごとに異なる音環境や利用目的への柔軟な対応が課題となっていた。

今回、同社と米国現地法人であるMitsubishi Electric Research Laboratoriesは、分離・抽出したい音をプロンプトで指示することで、複数話者の分離や音声強調、環境音の抽出などの複数の音源分離タスクを単一のAIモデルで実現する「タスク汎用音源分離技術」を開発。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

同技術で抽出した音を、異常検知や音声認識、音声操作、現場記録などのAIシステムの推論に用いることで、製造現場や公共空間における高度な状況理解を可能にし、フィジカルAIを導入したシステムの信頼性を向上できるという。

異常音や人の声を抽出し、フィジカルAIの推論精度を向上

主な特徴として、1つ目は混合音からプロンプトで指定された音のみを現場の状況に合わせて分離・抽出する点だ。複数話者の声を分離する「音声分離」、音声とノイズを分離する「音声強調」、異なる機械音を分離する「機械音分離」などのさまざまな音源分離タスクを単一のAIモデルで実現している。分離したい音の種類や数をプロンプトで指定する手法を新たに採用したことにより、会話や機械の稼働音、環境音、音楽などが混在する中から、現場の状況に応じて、必要な音声や機械の異常音、アラーム音などを抽出することを可能としている。

2つ目は、処理の高速化に加え、マイクの本数に依存しないアルゴリズムにより、エッジデバイスなど幅広い機器・システムへ実装が可能である点だ。演算量を削減する高速化技術でエッジデバイス、ロボット、監視システム、設備機器など計算リソースに制約のある機器やシステムへの実装を実現。これにより、工場やオフィスビル、公共施設など、さまざまな現場への導入ができるとのこと。また、マイク本数を問わず、単一のAIモデルで音源分離する技術を開発し、多様な入力デバイスに対応できる。

3つ目は、分離・抽出した音の活用により、製造現場や公共空間におけるフィジカルAIを導入したシステムの信頼性向上に貢献するという。同技術を用いて正確に分離・抽出した音を、異常検知、音声認識、現場記録などのAIシステムの推論に活用。これにより、AIシステムの推論精度が向上することで、製造現場や公共空間における複雑な現場理解が可能となり、フィジカルAIを導入したシステムの信頼性向上を担保する考えだ。さらに、音源の種類に応じた符号化を行うコーデック技術を開発し、音をトークン化してLLM(大規模言語モデル)に直接入力することもできるようになり、AIエージェントの状況理解・判断に聴覚機能を付与することを可能としている。

2027年度の実装を目指し実証を推進

今後、2027年度中のフィジカルAIへの実装やそのほか製品への適用を目指し、同技術のさらなる高速化と高精度化を進めるとともに、工場やオフィスビル、公共施設など、さまざまな現場での実証を行う。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ

さらに、同社のデジタル基盤「Serendie(セレンディ)」を活用し、異常検知、音声認識、音声操作、現場記録などのAIシステムと連携させることで、現場の音を起点としたデータ活用を促進していく方針だ。

なお、同技術は10月13日~同16日に開催する「CEATEC 2026」に「現場の多様な音から異常音や人の声を聞き分ける音源分離技術」として出展する。工場の機械音や楽器の音、複数人の声を同時に収音し、同技術で分離・抽出するデモンストレーションを通じて、音声認識や異常音診断への活用を紹介する。