マラソンを走ったり、踊ったりするヒト型ロボットの動画がSNS上にあふれているが、そのほとんどは米国や中国製だ。かつて「ロボット大国」と呼ばれた日本は、今、復権に向けた機運を高めている。その現在地を探る。
国産ヒト型ロボット「SEIMEI」の挑戦
2026年4月、京都市内でヒト型ロボットの試作機「SEIMEI(セイメイ)」が披露された。その体は、ロボットを動かすAIに使うGPU(画像処理装置)以外、すべて日本メーカーの部品で構成されている。開発したのは、ロボットメーカーのテムザック(京都市)や早稲田大学など、14社・2大学による「有志連合」だ。
メンバーには、アイシン、住友電気工業、村田製作所、カヤバ、マブチモーターなど、多くが自動車部品を手がけるメーカーが名を連ねる。部品や人手、データを持ち寄り、わずか4カ月で組み上げた。直前のトラブルにより二足歩行の披露はできなかったが、改良を続け、次のモデルの試作も始めている。
部品供給網の構築が鍵
中国ではヒト型ロボットの量産が始まり、部品供給網が広がっている。テムザック創業者の高本陽一氏は、「自動車の次の日本のものづくりはロボットで残さないといけない。供給網をつくり、基幹産業に育てる必要がある」と強調する。
現在のヒト型ロボットは、モーターやカメラなどを組み込んだ「体」と、その体を動かすAIの「頭脳」からなる。目指すのは、AIを進化させ、人間と同じように見聞きして考え、働けることだ。
早稲田大学の実用的アプローチ
早稲田大学は、介護や家事に幅広く使えるロボットを開発中だ。試作機が両手で人の足に靴下をはかせる姿は、2025年の大阪・関西万博で披露された。このロボットの「足」は台車型で、早稲田大次世代ロボット研究機構の菅野重樹教授は「手や腕で作業できることが大事で、上半身に力を入れている」と説明する。
家庭やオフィスでは二足歩行の必要性は低く、むしろ介護など力が必要な作業では台車型の方が安定し実用的だという。一方、企業側では二足歩行の開発が進む。
米中と競う日本の「勝ち筋」
専門家は、日本の強みである精密なモーターやセンサー技術を活かし、部品供給網の構築と実用化に特化した戦略が復権の鍵と指摘する。世界初の本格的なヒト型ロボットを生み出した歴史を背景に、国産ロボットが再び世界をリードできるかが問われている。



