兵庫県尼崎市に昨年春完成した阪神タイガースのファーム(二軍)施設「ゼロカーボンベースボールパーク」が、環境対策のモデルケースとして注目を集めている。試合会場となる日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎では、太陽光発電によって照明灯の電力をまかない、二酸化炭素(CO2)排出量の実質ゼロを達成。さらに、再生水の利用やプラスチックカップのリサイクルなど、多角的なエコ施策が展開されている。
太陽光パネル約1400枚で電力自給
スタジアムのLEDビジョン背面、室内練習場、選手寮兼クラブハウス「虎風荘」の屋根には、計約1400枚の太陽光パネルが設置されている。これにより、ナイター照明などの電力使用量の80%以上を賄う計画で、運用初年度の2025年には100%を達成した。また、グラウンド整備には再生水を使用し、外野フェンスのクッション材はスタジアムで販売されたビールなどのプラスチックカップをリサイクルしたものを活用している。
試合中には、若手選手が「ひとり3つのエコで、未来を変えよう」などと環境保全を呼びかけるメッセージがLEDビジョンに繰り返し映し出され、観客の環境意識向上を図っている。
官民連携で脱炭素先行地域に
尼崎市は、人口減少が進む大物地域にある小田南公園への阪神二軍施設誘致を推進し、2021年5月に基本協定を締結。環境省の「脱炭素先行地域」公募に阪神電鉄と共同で提案し、2022年4月に選定された。同スタジアムでは年間約80試合が行われ、2025年には約20万人が来場。市環境創造課は「環境問題に興味がない人にも球場に来て関心を持ってもらえる」と、人気球団ならではの集客効果に期待を寄せる。
6月初めには、環境についてクイズなどで学ぶ体験型イベント「エ虎(こ)フェス」が開催された。同スタジアムの矢浪峻介副球場長は「地域、環境、野球を掛け合わせたイベントを今後も市と企画していきたい」と述べた。
尼崎市の環境への歴史的取り組み
高度経済成長期に公害が深刻だった尼崎市は、2010年に産業界と共同で「ECO未来都市・尼崎」を宣言。市はクリーンセンターでのごみ焼却熱を利用した廃棄物発電も活用し、2030年度までに小田南公園などの先行地域でCO2排出量実質ゼロを達成するとともに、市全体で2013年度比50%以上の削減を目指している。



