トヨタ自動車は、水素を燃料とするエンジン車の実用化に向けて開発を本格化させている。2025年にも市販化を目指し、既存のガソリンエンジンをベースにした水素エンジンを搭載した試作車で走行テストを進めている。トヨタは、カーボンニュートラル実現に向けて、電気自動車(EV)だけでなく、水素エンジン車や燃料電池車(FCV)など複数の選択肢を用意する方針だ。
水素エンジンの仕組みとメリット
水素エンジンは、ガソリンエンジンの燃料噴射装置や点火プラグなどを改良し、水素を燃焼させることで動力を得る。二酸化炭素(CO2)を排出しないため、カーボンニュートラルに貢献できる。また、燃料電池車と比べてシステムがシンプルで、コスト低減が期待できる。さらに、エンジン音や振動など、内燃機関ならではのドライビングフィールを楽しめる点もメリットだ。
トヨタは、水素エンジンを搭載したGRヤリスやGRカローラなどで、スーパー耐久シリーズなどのレースに参戦し、過酷な条件下での耐久性や性能を検証している。レースで得られた知見を市販車の開発にフィードバックする方針だ。
実用化への課題:コストとインフラ
水素エンジン車の実用化には、コスト低減と水素ステーションの整備が大きな課題となる。現在、水素エンジン車の試作車は1台あたり数千万円のコストがかかるとされる。トヨタは、量産効果により価格を500万円台に抑えることを目標としている。しかし、水素エンジン車の販売台数が限られる中で、コスト低減は容易ではない。
また、水素ステーションの整備も課題だ。日本全国に約160カ所しかない水素ステーションは、ガソリンスタンドと比べて圧倒的に少ない。政府は2030年までに水素ステーションを1000カ所に増やす目標を掲げているが、設置コストや運営コストの高さが普及の障壁となっている。
水素エンジン車の市場性
トヨタは、水素エンジン車をまず商用車や業務用車両から投入し、徐々に乗用車に拡大する計画だ。特に、長距離走行や重量物の輸送が必要なトラックやバスなどで需要が見込まれる。また、水素エンジン車は、EVと比べて燃料補給時間が短く、航続距離も長いため、ユーザーの利便性が高い。
しかし、水素の製造コストが高いことも課題の一つだ。現在、水素の価格は1kgあたり約1000円と、ガソリンと比べて割高だ。政府は、2030年までに水素の供給コストを1Nm3あたり30円(約300円/kg)に低減する目標を掲げている。水素の安定供給とコスト低減が実現すれば、水素エンジン車の普及が加速する可能性がある。
トヨタの豊田章男社長は、「水素エンジンはカーボンニュートラルの有力な選択肢の一つだ。EVだけでなく、多様な技術で脱炭素社会を目指す」と述べている。同社は、水素エンジン車の開発を進めるとともに、燃料電池車やEVなども含めたマルチパスウェイ戦略を推進している。



