日本の半導体産業が復活に向けて動き出しているが、課題は山積している。政府は2021年に半導体戦略を策定し、数千億円規模の予算を投じて国内生産基盤の強化を図っている。しかし、専門家からは「人材不足や国際競争の激化など、克服すべき問題は多い」との声が上がる。
政府の戦略と投資
経済産業省は2021年6月に「半導体戦略」を発表。先端半導体の設計・製造技術の確立や、安定供給の確保を目指し、2021年度補正予算で約7740億円を計上した。このうち、台湾のTSMCとソニーグループが熊本県に建設する工場への補助金は約4760億円に上る。また、米IBMと提携した「Rapidus」には、2025年度までに総額約3300億円の支援が決まっている。
企業の取り組み
国内半導体メーカーも動きを見せる。キオクシアは四日市工場に新棟を建設し、NAND型フラッシュメモリーの生産能力を増強。ルネサス エレクトロニクスも那珂工場などでパワー半導体の生産拡大を進める。ただ、これらの投資は先端半導体ではなく、成熟した技術領域が中心だ。
東洋経済の取材に対し、半導体業界アナリストのA氏は「日本企業はかつて世界をリードしたが、現在の先端半導体ではTSMCやサムスンに大きく水をあけられている。巻き返しには、巨額の投資とともに、産学連携による人材育成が不可欠だ」と指摘する。
人材不足と国際連携
半導体業界では、エンジニア不足が深刻だ。経済産業省の試算によると、今後10年間で国内半導体産業は約3万5000人の人材が不足する見通し。これに対し、政府は2022年度から半導体関連の人材育成プログラムを開始。大学や高専と連携し、年間1000人規模の育成を目指す。
国際連携も重要なテーマだ。日本は米国、台湾、オランダなどと協力し、先端半導体の研究開発やサプライチェーン強化を進める。特に、米国との協力は重要で、RapidusはIBMと2ナノメートル世代の半導体技術を共同開発している。
今後の展望
半導体戦略の成否は、日本の産業競争力に直結する。自動車や家電、ロボットなど、あらゆる製品に半導体は欠かせない。安定調達の確保は、経済安全保障の観点からも急務だ。政府は2030年までに国内半導体関連売上高を15兆円に引き上げる目標を掲げるが、実現には官民一体の取り組みが求められる。



