半導体産業復活へ向けた政府の大規模支援
日本政府は、経済安全保障の観点から半導体産業の国内回帰を強力に推進している。2021年度補正予算では、半導体関連に約1.9兆円を計上し、先端半導体の製造拠点整備や研究開発を支援。特に、次世代半導体の量産を目指すラピダス社には最大1,300億円の助成が決定した。
ラピダスは、2025年までに北海道千歳市に2ナノメートル世代の半導体工場を建設し、2027年の量産開始を目標とする。同社には、キオクシアやソニーグループなど国内主要企業が出資し、官民連携の象徴的なプロジェクトとして注目を集めている。
TSMCの熊本進出とサプライチェーン構築
台湾積体電路製造(TSMC)は、熊本県菊陽町に建設中の第1工場が2024年に量産開始予定であり、ソニーグループやデンソーとの合弁事業として進められている。この工場では、車載用や画像センサー向けの半導体を生産し、年間生産能力は12インチウェハー換算で月間5万5千枚を見込む。
さらに、TSMCは第2工場の建設も検討しており、日本政府は最大7,320億円の補助を表明。これにより、熊本県は世界的な半導体クラスターへと発展する可能性がある。経済産業省の関係者は「TSMCの進出は、日本の半導体産業の競争力強化に不可欠だ」と述べている。
国内半導体メーカーの生き残り戦略
一方、ルネサス エレクトロニクスやロームなどの既存メーカーも、車載半導体やパワー半導体に特化した戦略で存在感を示す。ルネサスは、2023年にアルティアム(旧インテルのFPGA事業)を買収し、先端技術の獲得を加速。ロームは、炭化ケイ素(SiC)パワー半導体で世界シェアトップを目指し、福岡県に新工場を建設中だ。
しかし、課題も多い。半導体業界では人材不足が深刻で、経済産業省の試算では、今後10年間で約3万5千人の技術者が必要とされる。また、原料や製造装置の調達リスクも存在し、サプライチェーン全体の強化が急務となっている。
復活の鍵は国際連携と持続可能な投資
専門家は、日本の半導体産業復活には、官民一体となった長期的な投資と国際的な連携が不可欠と指摘する。東京大学の黒田忠広教授は「日本は、材料や製造装置の強みを活かしつつ、設計やシステムレベルでの競争力を高める必要がある」とコメント。
政府は、2023年6月に「半導体戦略」を改定し、2030年までに国内半導体関連の売上高を15兆円に引き上げる目標を掲げた。実現には、年間3兆円規模の継続的な投資が必要とされ、財政負担との兼ね合いが課題となる。
日本半導体産業の復活は、経済安全保障だけでなく、自動車や家電など幅広い産業の競争力にも直結する。今後の政策の成否が、日本の産業構造の将来を左右することになるだろう。



