電気自動車(EV)への移行が世界的に加速する中、日本自動車産業の中国製電池への依存度が高まっている。経済安全保障の観点から、この依存は大きなリスクをはらんでいると専門家は指摘する。特に、地政学的リスクや供給途絶の可能性が懸念されており、各社はサプライチェーンの多様化を急いでいる。
中国製電池依存の現状
現在、世界のリチウムイオン電池生産の約70%を中国が占めている。日本の自動車メーカーも例外ではなく、トヨタや日産、ホンダなどは中国の電池メーカーから供給を受けている。しかし、米中対立の激化や台湾情勢の緊迫化により、中国からの輸出が停止されるリスクが現実味を帯びてきた。
経済産業省の試算によると、中国からの電池供給が3カ月停止した場合、日本の自動車生産は約300万台減少する可能性がある。これは年間生産台数の約4割に相当する。また、日本自動車工業会の報告書では、電池の調達先を中国に依存しすぎると、サプライチェーン全体の脆弱性が増すと警告している。
各社の脱中国戦略
こうしたリスクを背景に、日本の自動車メーカーは中国依存からの脱却を模索している。トヨタは、米国でバッテリー生産工場を建設し、2025年から生産を開始する計画だ。また、日産は英国の工場で電池生産を検討しており、ホンダはソニーとの合弁会社で電池の調達先を多様化する方針を示している。
さらに、政府も補助金を拡充し、国内での電池生産拠点設立を後押ししている。2023年度の補正予算では、蓄電池の国内生産強化に約3,300億円が計上された。これにより、2030年までに国内の電池生産能力を現在の約20倍に引き上げる目標を掲げている。
課題と今後の展望
しかし、脱中国には高いコストや技術的な課題が伴う。中国製電池はコスト競争力が高く、品質も安定している。一方、日本国内で生産する場合、人件費や原材料費が高くつくため、価格競争力の低下が懸念される。
また、電池の原材料であるリチウムやコバルトの調達も課題だ。中国はこれらの精製工程でも世界シェアの大半を握っており、代替サプライチェーンの構築には時間がかかる。
専門家は「完全な脱中国は非現実的であり、リスク分散が現実的な対応だ」と指摘する。具体的には、韓国や日本の電池メーカーとの連携強化、リサイクル技術の開発、次世代電池(全固体電池など)への投資が重要となる。



