電気自動車(EV)へのシフトが加速する中、車載半導体の重要性が飛躍的に高まっている。これまで半導体は外部調達が一般的だったが、供給不足や性能差別化の観点から、自動車部品大手が内製化に乗り出している。日立Astemoとデンソーはその先頭を走る存在だ。
日立Astemo、AI制御半導体を自社開発
日立Astemoは、EVのモーターやバッテリーを最適制御するAI搭載半導体の自社開発を進めている。同社は2025年までに、車両の走行データをリアルタイムで解析し、エネルギー効率を最大限に高める半導体を製品化する計画だ。これにより、航続距離の延長やバッテリー寿命の向上が期待される。
同社の担当者は「半導体を内製化することで、他社との差別化を図るとともに、サプライチェーンリスクを軽減できる」と述べている。日立Astemoはすでに、AI半導体の設計から製造までを一貫して手掛ける体制を整えつつある。
デンソー、SiCパワー半導体に注力
一方、デンソーは炭化ケイ素(SiC)を使ったパワー半導体の内製化に力を入れている。SiC半導体はシリコンに比べて電力損失が少なく、高電圧・高温環境での動作に優れるため、EVのインバーターなどに不可欠だ。デンソーは2024年度までに、SiC半導体の生産能力を2022年度比で2倍以上に増強する計画を明らかにしている。
デンソーの半導体事業責任者は「SiCはEVの性能を左右するキーデバイス。内製化により、他社に先駆けた技術革新を実現する」と強調する。同社はトヨタ自動車との連携も強化し、次世代EV向けにSiCモジュールの共同開発を進めている。
部品大手の内製化がもたらす影響
こうした部品大手の半導体内製化は、自動車業界全体に大きな影響を及ぼす。従来、半導体メーカーに依存していたサプライチェーンが変化し、自動車部品メーカーの発言力が強まる可能性がある。また、内製化により開発期間が短縮され、EVのモデルチェンジサイクルが加速するとも指摘されている。
一方で、半導体製造には巨額の投資が必要であり、すべての部品メーカーが追随できるわけではない。業界関係者は「内製化は一部の大手に限られるだろう。中小サプライヤーは、専門性の高い半導体に特化するなど、生き残り戦略が求められる」と分析する。



