湘南の人気かき氷店、夏のピーク時に店を閉める苦渋の決断
湘南の人気かき氷店、夏に店を閉める決断

真冬も行列の人気店、夏に店を閉める理由

神奈川県藤沢市鵠沼海岸にある人気かき氷店「埜庵」は、かき入れ時の夏に店舗を閉め、百貨店やショッピングセンターでの催事に注力するという苦渋の決断を下した。雨天や台風で売上が半減するリスクを避け、計画的な経営を目指すためだ。

催事ではテイクアウトカップで提供し、売上に応じた歩合ではなく固定家賃とすることで、多く売れば利益が残る仕組みを採用。ただし、マージンや経費がかかるため、店舗営業より大きく儲かるわけではないが、損益分岐点が明確になり計画が立てやすい利点があるという。

天気に左右されるギャンブル経営

「うまくいけば儲かる年もあるけれど、最終的には努力より天気に左右される。ギャンブルです」と店主は語る。それでも毎日1,000人分の仕込みが必要で、廃棄を減らすため果汁加工品やOEMによる半加工シロップを導入して原価を安定させている。今年は大分の団体からカボスと甘夏の果汁を大量に仕入れ、果樹畑の再生にも取り組む。

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昨年からは駅ビルやショッピングセンターの空き店舗、遊休地でのポップアップも開始。支払いを固定化することで、売上増がそのまま利益になる仕組みに変更した。

「かき氷屋として生きていく」という信念

「埜庵を始めたときからずっと、僕は『かき氷屋として生きていくこと』を一番に考えています。かき氷をあたかも自分の作品のようには考えていません」と店主は言う。催事では既存の客を連れてくるのではなく、その場所の新規客に向けてかき氷を作り、新たなファンを獲得する方針だ。

単価はなるべく値上げしないようにしている。高価格帯は他業種の参入を招くため、あえて1杯1,000円のシンプルなかき氷を1日1,000人に提供するスタイルを貫く。「ブルーハワイでは物足りないけれど、かき氷に3,000円は払えない」という層が大多数とみて、真似されにくいビジネスモデルを確立している。

夏の戦いと冬の常連との時間

夏の催事は埜庵の一年を支える柱だが、日々の戦いでもある。冬は鵠沼海岸の店舗で常連客との時間を大切にし、家庭的な雰囲気の中でスタッフとの談笑を楽しむ客も多い。接客や心地よい時間といった体験も、客が対価を払う理由の一つだ。一方、百貨店の催事では、多数のかき氷機とスタッフが並び、スピード感と正確さで次々とかき氷を削り続ける機械的な運営が行われる。

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