大阪大学箕面キャンパスにある外国学図書館は、約200言語の書籍を所蔵する多言語の宝庫だ。国立大学と公立図書館が一体となった珍しい施設で、市民も自由に利用できる。
約60万冊の蔵書と開放的な空間
施設の1~4階には大阪大外国学図書館の約60万冊と、箕面市立船場図書館の約12万冊が置かれている。随所に吹き抜けがある開放的な空間で、学生と市民が行き来できる。外国語の絵本や地域交流イベントも行われ、近くには鉄道駅や高層マンションがあり、にぎわいの拠点となっている。
希少な辞書コーナー
3階の辞書コーナーには、古典アルメニア語辞典やマヤ語辞典、パーリ語辞典など、通常では見かけないタイトルが並ぶ。スウェーデン語専攻2年の佐渡千春さんは「フェロー語の文法解説書を見つけ、驚いた。あらゆる言語を勉強できる環境は他にない強み」と語る。
戦火から守られた資料
1階の書庫には、1945年の大阪大空襲から教授が守った約5万冊の資料が保管されている。教授は地域住民と共にコンクリート造りの書庫へ避難し、鉄扉の隙間から入る火の粉にやけどを負いながら夜明けまで扉を押さえ続けた。その鉄扉は現在、研究講義棟で展示されている。
守られた資料には当時の教科書や各国語の歴史・自然科学・芸術書が含まれ、講義や研究に使われてきた。ベトナム語専攻の清水政明教授は、空襲を逃れた漢籍の棚からチュノム(ベトナムで使われた漢字由来の文字)で書かれた本を発見。近年、17冊をページごとに撮影しデータベースで公開した。
データベース作成に携わった大学院生の内田和さん(母がベトナム出身)は「古い書物に歴史の重みを感じる。先人たちのおかげで勉強できることに感謝している」と話す。
大学概要と図書館の歴史
大阪大は1931年に6番目の帝国大学として設立。外国語学部の源流は1922年開校の大阪外国語学校で、2007年に統合。現在は25言語から専攻を選べる。外国学図書館は2021年に開館し、箕面市立の生涯学習センターも入る複合施設を大阪大が指定管理者として運営。2024年度の入館者数は約40万人。入館・閲覧は申請不要で誰でもできる。
至宝:ブルガリアの冊子
ブルガリア政府が1921年に配ったキリル文字の冊子は、文字の原型を作った聖職者2人をたたえ、第一次世界大戦後の国民結束を促した。ブルガリア語講師のブラジミロブ・イヴォさんは「文化が社会を一つにできるというメッセージを伝える貴重な資料」と語る。
学長に聞く
熊ノ郷淳学長は「自分で図書館に足を運び、手に取った本から得た知識は一生もの。書架を眺めるだけで断片的な知識が整理され、予期せぬ出会いから興味が広がる。言葉の力は大きい。まずは好きなものを楽しく、たくさん読んでほしい」と述べた。



