NHK放送技術研究所(以下、NHK技研)は、技術展示イベント「技研公開2026」(5月28日~31日)で、広視野撮影に適した「曲面イメージセンサー」を展示している。厚さわずか0.01mm(12μm)まで薄くしたシリコン製イメージセンサーを湾曲状態で使用する技術で、小型かつ高画質な広視野カメラの実現を目指す。2030年ごろの実用化を目標としている。
曲面イメージセンサーによる広視野撮影
広視野撮影には広角レンズを使うが、画像の中心はくっきりしていても、周辺部はレンズの収差によって結像がずれ、ボヤけたり、色がにじんだりしてしまう。NHK技研は、平面のセンサーではなく、レンズが本来結像する湾曲面に合わせてセンサー自体を湾曲状態に曲げることで、このずれを補正。実際に曲面センサーで撮影し、周辺部のボヤケが改善できることを確認したという。
湾曲によるボヤケ改善効果
平面センサーでは四隅のボヤケが目立つのに対し、曲面センサーでは抑制されている。曲面イメージセンサーによるボヤケ改善の原理は、レンズの収差をセンサーの湾曲で吸収することにある。
センサーを湾曲させる利点
センサーを湾曲させる利点は画質面だけではない。一般に広角レンズで収差を抑えるには複数枚のレンズを組み合わせた複雑な設計が必要だが、センサー側を曲げて収差を吸収できれば、レンズの構成を簡素化できる。
曲面イメージセンサーの構造
基板に薄い酸化膜を挟んだ特殊な構造を作り、エッチング(化学反応で不要な部分を溶かす処理)でシリコン支持基板を除去する。この際、酸化膜の部分でエッチングを停止させることで、必要な構造だけを残し、厚さ0.01mmに仕上げる。薄くするほど曲げやすくなるため、この薄型化技術が同研究の強みとなっている。
転写技術
この薄型化技術と組み合わせるのが、センサーを曲げた状態で固定する「転写技術」だ。極薄のセンサーは単体では扱えないため、いったん仮の土台に貼り付けてから、曲げられる柔らかい基板へ移し替える。これにより、曲率半径15mmの湾曲状態ができた。
今後の展望
一連の技術で鍵を握るのが「曲げ」だが、これはセンサーの大きさにも関わる。大型化できるのかとの問いに、担当者は、曲げられるセンサー自体を大きくすることは可能としつつ、大きくなるほど湾曲して固定するのが難しくなると説明した。NHK技研は27年までに曲面イメージセンサーの基盤技術を確立し、30年ごろまでに小型で高画質な広視野カメラの実用化を目指す方針だ。



