ファクス文化の建設業界にICT建機、中小企業が導入で労働時間55時間削減
ファクス文化の建設業界にICT建機、中小企業が導入で労働時間削減

建設業界で「ICT建機」と呼ばれる次世代型建設機械の導入が広がっている。人手不足の解消や安全性向上につながるためだ。中小企業ながら積極的に活用し、京都労働局の「ベストプラクティス企業」に選ばれた「福田建設工業」(京都市南区)に導入の課題や利点を聞いた。(向野晋)

ICT建機導入の背景

同社は従業員20人の総合建設会社。現場監督の常務・福田聆さん(35)、経理担当でダンプトラックも操る取締役の晶さん(34)の姉妹が、父親で2代目社長の明さん(66)を支える。主に元請けの地場ゼネコンから土木や建設工事を請け負っている。

ICT建機は2022年に導入し、今年3月に3台目を購入。「中小ではかなり多い数」(同局労働基準部)だ。国は業界の「働き方改革」の切り札として導入を後押しするが、中小では進まない。聆さんは「コストと人材という二つの理由がある」と話す。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

デジタル化への挑戦と効果

聆さんは大学卒業後、米国の不動産会社や外資系化粧品会社でキャリアを積んだ。コロナ禍を機に実家へ戻り、21年春に入社すると、「ファクスでのやり取りなど、あまりにもアナログな業界」に驚いた。先に入っていた晶さんと職場のデジタル化を進めるうち、ICT建機の活用にたどりつく。「ベテランの経験や勘に頼りすぎており、高齢化を見据えた危機感も強かった」と振り返る。

一つ目のコストでは、取り付け型の機器でも数百万円、建機ごと買えば数千万円かかる。ただ、「中小企業庁の省力化投資補助金も使えるし、長い目で見れば、初期投資で回収できる。他社との差別化や若い人材の確保という意味でも大きい」と決断した。

二つ目の人材は、ICT建機には施工の指令を出す3D設計データが必要で、それらを作成する専門人材が欠かせない。従来のパワーショベルで掘削する場合、杭や糸で地面に目印を示す「丁張り」を行い、建機の近くで別の作業員が指示を出して作業を進める。一方、ICT建機ではデータとショベルの位置を照合し、設計通りの深さや形になるよう自動制御される。

導入のメリットと今後の展望

大手では人材育成が進むが、中小ではそこまでの余力はない。同社では、聆さんの夫・斉藤大輔さん(37)がデータ作成を担う。元美容師でICT施工に関する知識はなかったが、パソコンの扱いには習熟。転職してこの分野で先行する兵庫県姫路市の建設会社で修業させてもらい、専門知識を得た。

導入のメリットは大きい。同社では「丁張り」などの手間がなくなり、作業効率が向上。月平均で45~55時間の労働時間削減につながった。「土曜まで予定していた工期が金曜で終わり、休日が1日増えるイメージ」という。

街中の狭小な土地でのマンション建設などでは、建機の周囲に作業員を置かずに済むことが労働災害の減少に直結する。聆さんは「うちではないが、建機との接触で命を落とすこともある。その効果が一番大きいかもしれない」と話す。

ICT建機とは

全地球測位システム(GPS)やセンサーなどの情報通信技術(ICT)と、3次元(3D)の設計データを連動させる建設機械。掘削工事などを自動制御で行うため、比較的経験の浅いオペレーターでも操作できる。操縦席に3Dデータを映すモニターが設置されているのが特徴で、外観は普通の建機とあまり変わらない。中小企業向けの補助金が使える機種もある。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ