アメリカン・カルチャーを象徴するブランドとしてのハーレーダビッドソンに憧れはあるものの、バイクの免許を取得する予定はないので、結局自分には縁のない乗り物なのかな……と諦めている人がいるとすれば、それは早計だ。クルマの免許で乗れるハーレーが存在する。
クルマの免許で乗れるハーレー、ありました!
そもそもバイク未経験で運転できるのか?マニュアル(MT)の自動車を運転できる免許を持っていれば、ハーレーのトライクに乗ることが可能だ。トライクとは3つのタイヤで走る乗り物で、ハーレーのトライクは前輪1つ、後輪2つの構成となっている。バイクのようにまたがって乗るが、当然ながら地面に足を付いていなくても横に倒れる心配がない。
ハーレーのトライクは「ロードグライド3」(553.52万円)、「ストリートグライド3」(573.98万円)、「CVO ストリートグライド3」(800.58万円)の3種類から選べる。今回は「ロードグライド3」に試乗した。
トライクの操作と運転感覚
ハーレーのトライクはMT車だ。クラッチを切るにはハンドル左のレバー(自転車なら後輪のブレーキの位置にあるレバー)を握る。ギアは左足でレバーを上げ下げして切り替える。ハンドル右のレバーと右足で踏むペダルがブレーキだ。
そもそもクルマのMTにすら久しく乗っていないのに、トライクを運転できるのか……最初はそう思っていたが、クラッチを手で操作するのは半クラを含めて意外にやりやすく、比較的簡単に走り出すことができた。公道ではなく広場のようなところを何周か走ってみたところ、2速にギアチェンジして30km/hくらいまで加速できる程度にはすぐに上達した。
バイク未経験、クルマはペーパードライバーな筆者が借り物のヘルメットを身に着けて「ロードグライド3」を運転する様子。初心者でもそれなりに様になっているのかどうかは判断がつかないが、クルマと違って30km/hくらいでもスピード感がすごい。法定速度内で十分に楽しめるはずだ。
ただし、交差点に差し掛かったところを想定し、一旦停止してから右左折する操作では、ウインカーを出したり左右を見たりと同時に様々な動きをしつつ、半クラッチにしてスロットルをそろりと開ける一連の操作が難しく、何度かエンストしてしまった。これはクルマのMTに乗る時と同じで、練習(慣れ)が必要な部分だ。
また、レバーをひねって走る乗り物に慣れていないせいか、右左折などでスロットル以外に意識を取られると、右手が勝手に動いてしまい、意図せずエンジン回転数が上下することがあった。これも慣れの問題だろう。
クラッチレバーの握りがかなり硬いため、左手の握力が厳しいと感じた。クラッチレバーを軽くするサードパーティー製オプションがあるとのことなので、乗るなら装着必須と思った次第だ。
ハンドル操作は、どちらかというと曲がりたい方向にグリップを押し出す感じ。左に曲がるときは右のグリップを押し出すイメージだ。曲がる方向に体を傾ける必要はない。この操作は全く難しくないが、バイクと違って後輪が横に張り出しているため、内輪差には要注意だ。
車体スペックと装備
「ロードグライド3」のボディサイズは長さ2,615mm、幅1,460mm、シート高710mm、最低地上高140mm、車両重量537kg。ラゲッジ積載容量は0.06立方メートルで、ヘルメット2~3個は入りそうだった。
試乗会のスタッフに運転してもらい後席も体験したが、こちらも安定感抜群。しっかりとしたシートとつかまるためのバーも完備されており、安心感が高い。普通のバイクでタンデムするよりも、かなり快適に過ごせるのではないかと思う。
Milwaukee-Eight VVT 117エンジンを搭載。排気量は軽自動車約3台分の1,923cc!最高出力は105HP(78kW)、最大トルクは170Nm。メーターは発色が良く見やすい。スマホを有線(USB Type-C)またはBluetoothで接続可能で、「Apple CarPlay」に対応しており、画面にナビを表示することもできる。
ハーレーのトライクを選ぶ意味とは
普段はクルマの取材をしているが、最近試乗するのは電動化と知能化が進んだモデルばかり。静かで乗り心地がよく、夏は涼しく冬は暖かく、高速道路では(ほぼ)自動運転で走る機能が付いた車種も多く、移動には最高の乗り物だ。
ハーレーのトライクは、高度な運転支援システムの付いた最新の電気自動車とは全く異なる乗り物だ。エンジンをかけると体のすぐ近くから「ブルン!ドロドロドロ」と音がする。エンジン由来の振動を体で感じる。天気が良ければ日光にさらされ、この季節だと暑い。クラッチやギアチェンジを含め、走行中にやることがたくさんある。
だが、やはり3輪とはいえワイルドでいかつい雰囲気すらあるハーレーを自分の力で制御しながら、風を感じつつ走る面白さは確かにある。
バイクの免許を取ろうと思ったことがなく、将来的に取るつもりもない自分が、まさかハーレーに乗れるとは思っていなかった。この先の人生で、「自分はハーレーに乗ったことがある」と人に言えると思うと、何だか嬉しい。
今回は「ロードグライド」の2025年モデルと2026年モデルを乗り比べる機会があった。ハーレーのスタッフによれば、2026年モデルは従来よりも後輪のサスペンションの動く幅が倍増し、左右のサスは独立して上下に動く機構となっている。これにより、段差を乗り越えるようなシーンでも乗り心地がかなり改善しているとのこと。タンデムで後ろに乗る人にとっても嬉しい改良だ。
3輪のトライクならタンデムで後ろに乗っても安定しているし、トランクにはボストンバッグ程度なら積めそうなので、ちょっとした旅行も大丈夫そう。生活の足として使うのに適した乗り物とは思わないが、もし余裕があるなら、クルマの免許で乗れる趣味の乗り物として、ハーレーのトライクを持つのは一興ではないかと感じた。そろそろバイクがきつくなってきたというベテランライダーにもおすすめできる乗り物だった。



