横井康孝氏が語る「日本のEV戦略」と自動車産業の未来
横井康孝氏が語る日本のEV戦略と自動車産業の未来

日本の電気自動車(EV)戦略は、世界の潮流に比べて大きく遅れを取っている。元日産自動車のエンジニアで、現在はEVコンサルタントとして活動する横井康孝氏は、その現状と課題について警鐘を鳴らす。

政府のEV目標は非現実的

日本政府は2035年までに新車販売の100%を電動車(EV、プラグインハイブリッド車、燃料電池車)にする目標を掲げている。しかし、横井氏はこの目標が非現実的だと指摘する。「現在のEV普及率は約1%に過ぎず、10年余りで100%にするにはインフラ整備やコスト削減が急務です」と語る。

特に、充電インフラの整備が大きな課題だ。日本全国の急速充電器は約2万基と、欧州や中国に比べて圧倒的に少ない。横井氏は「家庭用の普通充電器も含め、設置数を10倍以上に増やす必要がある」と強調する。

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バッテリー技術の壁

EVの心臓部であるバッテリーについて、横井氏は「日本はリチウムイオン電池の技術では先行したが、量産とコスト競争で中国や韓国に追い抜かれた」と分析する。現在、世界のバッテリー生産の約70%を中国が占めており、日本メーカーのシェアは低下している。

また、全固体電池などの次世代技術の実用化にも時間がかかると見る。「全固体電池は2030年以降の量産開始が現実的で、それまでの間、既存のリチウムイオン電池の改良が不可欠」と述べる。

自動車産業の雇用への影響

EVシフトは、自動車産業の雇用にも大きな影響を与える。エンジンやトランスミッションなどの部品点数が減るため、部品メーカーの多くが事業転換を迫られる。横井氏は「日本の自動車関連雇用は約550万人。EV化でそのうち数十万人が職を失う可能性がある」と警告する。

一方で、EV化は新たな雇用も生む。バッテリーやモーター、ソフトウェア分野での人材需要が高まる。横井氏は「政府と産業界が連携し、労働者の再教育や転職支援を早急に進めるべき」と提言する。

世界のEV市場の現状

世界のEV販売台数は2023年に約1000万台に達し、新車販売の約13%を占める。特に中国市場が拡大しており、世界販売の約60%を占める。欧州でも販売が伸びており、日本は出遅れている。

横井氏は「日本メーカーはハイブリッド車で成功したが、それがEVへの移行を遅らせた」と指摘。トヨタ自動車がハイブリッドに注力する一方、日産はリーフで先行したが、その後中国やテスラに追い抜かれた。

今後の展望と提言

横井氏は、日本がEVで巻き返すためには、以下の3点が重要だと訴える。第一に、充電インフラへの大規模投資。第二に、バッテリーの国産化とリサイクル技術の確立。第三に、自動運転技術との融合による新たな価値創造だ。

「日本は技術力で劣っているわけではない。しかし、スピード感と戦略性が不足している。官民一体となった取り組みが不可欠です」と横井氏は結ぶ。

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