世界的な電気自動車(EV)シフトに陰りが見え始めている。トヨタ自動車は2026年のバッテリー式電気自動車(BEV)の世界生産計画を従来の150万台から100万台に下方修正した。これは、成長鈍化するEV市場に対応した現実的な判断と見られる。
トヨタ、BEV生産計画を3分の2に縮小
トヨタは2023年5月に「2026年までにBEVを年間150万台販売する」目標を掲げていたが、2024年に入り計画を100万台に下方修正した。この背景には、世界主要市場でのEV販売の伸び悩みがある。特に米国や欧州では、価格高騰や充電インフラ不足から消費者のEV離れが顕著になっている。
トヨタの豊田章男会長は「EVだけでなく、ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)、水素燃料電池車(FCV)など、顧客のニーズに合わせたマルチパスウェイ戦略が重要」と述べ、多様な電動化技術を併用する方針を強調している。
世界のEV販売、成長鈍化が鮮明に
国際エネルギー機関(IEA)の報告によると、2024年の世界のEV販売台数は前年比約20%増の1700万台と予測されるが、2023年の35%増から成長率は半減する見込みだ。特に中国市場では競争激化による価格競争がメーカーの収益を圧迫しており、BYDなど一部のメーカーは値下げを余儀なくされている。
欧州では、ドイツやフランスがEV購入補助金を削減した影響で、2024年上半期のEV販売が前年同期比で減少した。米国でもテスラの販売が伸び悩み、メーカー各社が生産計画の見直しを迫られている。
トヨタのマルチパスウェイ戦略が再評価
こうした状況下で、トヨタのマルチパスウェイ戦略が改めて注目されている。トヨタはHVで長年の実績を持ち、PHEVやFCVも含めた幅広い電動化ラインアップを展開。2024年上半期の世界販売では、HVが全体の約30%を占め、BEVはわずか1%未満にとどまる。しかし、HVの販売は好調で、特に北米市場ではHV需要が急増している。
豊田会長は「EVだけに集中するのはリスクが大きい。顧客が求める多様な選択肢を提供することが、持続可能なモビリティ社会への近道だ」と述べ、戦略の正当性を主張している。
日本の自動車メーカー、EV投資の見直し進む
他の日本メーカーも同様の動きを見せている。ホンダは2024年5月、北米でのEV生産計画を延期し、GMとの共同EV開発を見直すと発表。日産自動車も2026年までにEV販売比率を40%とする目標を掲げているが、市場の変化に対応して柔軟な計画修正を検討している。
業界アナリストの多くは、EVシフトが想定より遅れると指摘する。調査会社マークラインズのアナリストは「EVの普及には充電インフラやバッテリー価格の低下など、まだ多くの課題がある。当面はHVやPHEVが主流となるだろう」と分析している。
マルチパスウェイ戦略の課題と展望
一方で、マルチパスウェイ戦略には課題もある。複数のパワートレインを並行開発するには巨額の投資が必要で、特にFCVはインフラ整備が遅れて普及が進んでいない。また、中国市場ではEVシフトが急速に進んでおり、日本メーカーがEV戦略を後退させれば、同市場での競争力低下につながるリスクもある。
トヨタは2025年までにBEV向けに約2兆円の投資を計画しているが、今回の生産計画下方修正で投資効率が問われることになる。同社は「需要に応じて柔軟に生産を調整する」としており、市場動向を注視しながら戦略を練り直す考えだ。
世界の自動車業界は、EVシフトの加速と減速の狭間で難しい舵取りを迫られている。トヨタのマルチパスウェイ戦略が正しいかどうかは、今後の市場の行方次第と言えるだろう。



