タイのEV生産拠点化加速、BYDなど中国メーカー相次ぎ進出
タイのEV生産拠点化加速、BYDなど中国メーカー進出

タイが東南アジアにおける電気自動車(EV)の生産拠点として急速に存在感を高めている。中国のBYD(比亜迪)や長城汽車(Great Wall Motor)など中国メーカーが相次いで工場建設を発表し、タイ政府の優遇策も追い風に、自動車産業の地図が塗り替わりつつある。

BYDが新工場建設、年間15万台生産へ

中国のEV最大手BYDは2022年9月、タイ東部のラヨーン県に新工場を建設すると発表した。投資額は約179億バーツ(約680億円)で、2024年からの稼働開始を目指す。同工場では年間15万台のEVを生産する計画で、タイ国内で販売するほか、東南アジア諸国連合(ASEAN)市場への輸出拠点とする方針だ。

BYDの王伝福(Wang Chuanfu)会長は「タイは東南アジア最大の自動車市場であり、EVへのシフトが加速している。タイ政府の強力な支援と充実したサプライチェーンを評価し、進出を決めた」とコメントしている。

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長城汽車や合衆新能源も追随

中国の長城汽車は2021年、タイ中部のロッブリー県にあった旧ゼネラル・モーターズ(GM)工場を買収し、EV生産に乗り出した。同社はタイでSUVタイプのEV「オーラ(Ora)」を販売しており、2022年上半期の販売台数は前年同期比で約3倍に増加した。

また、中国の新興EVメーカーである合衆新能源(Hozon Auto)も2022年、タイに現地法人を設立し、2023年からEVの販売を開始すると発表。同社の張勇(Zhang Yong)最高経営責任者(CEO)は「タイは東南アジア市場への玄関口であり、政府のEV普及政策が追い風となる」と述べている。

タイ政府の優遇策と2030年目標

タイ政府は2030年までに新車販売の30%をEVにする目標を掲げ、各種優遇策を打ち出している。具体的には、EVの輸入関税を最大40%引き下げるほか、完成車メーカーに対しては法人税の最大8年間免除、部品メーカーには最大5年間の法人税免除などの恩典を用意している。

さらに、タイ投資委員会(BOI)は2022年、EVバッテリーの生産を促進するため、投資案件に対する優遇措置を拡充。バッテリーセル生産には最大8年間の法人税免除、モジュールやパック生産には5年間の免除を適用する。

日系メーカーの対応迫られる

タイの自動車市場は長年、トヨタ自動車やいすゞ自動車、ホンダなど日系メーカーが支配してきた。しかし、中国メーカーのEV攻勢を受け、日系メーカーも対応を迫られている。

トヨタは2022年12月、タイでピックアップトラックのEV「IMV 0」のコンセプトモデルを公開し、2023年以降に生産を開始する計画を明らかにした。ホンダも2024年までにタイでEVの生産を開始する方針だ。

業界関係者は「タイはASEAN最大の自動車生産国であり、EVシフトの成否は日本メーカーの戦略にも大きな影響を与える」と指摘する。

今後の展望と課題

タイのEV市場は急拡大しており、2022年のEV販売台数は前年の約3倍となる1万3000台以上に達した。しかし、充電インフラの整備や価格競争の激化など課題も多い。

タイ政府は2025年までに公共充電スタンドを1万2000基設置する目標を掲げているが、2022年末時点で約2000基にとどまっている。また、中国メーカーの低価格EVが市場に流入し、日系メーカーの競争力が低下する懸念もある。

タイ自動車研究所の予測によると、2030年のタイ国内EV生産台数は約100万台に達し、うち約50万台が輸出されると見込まれている。ASEAN全体でもEV需要が高まっており、タイが域内のEV生産ハブとしての地位を確立できるかが注目される。

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