物価統制令の下で入浴料金が抑えられてきた銭湯が、燃料費や光熱費の上昇で経営環境が悪化し、廃業が後を絶たない。こうした中、サウナを刷新して新たな利用者を呼び込む動きが出ている。これまで利用していなかったサウナ愛好家を取り込もうという試みだ。
大阪市福島区にサウナ刷新の銭湯が開業
大阪市福島区で8月23日に開業した「しずのゆ福島」は、2025年に閉店した「延命湯」が前身だ。延命湯は1983年にオープンし、地域の常連客が多かったが、オーナーの高齢化もあって営業継続を断念。それを知った関東で銭湯の再生を手がける「yue」(東京)の大沢秀征社長(25)がオーナーを説得し、刷新した。
延命湯は建築家・竹原義二氏が設計し、風情のあるタイルや曲線を多用した浴槽など趣のある内装が特徴だった。そうした設備や延命湯の看板は残しつつ、女湯のスペースを取り壊してサウナを拡張し、小ぎれいな外観や内装に仕上げた。
SNSではサウナに関する発信を重視。8月下旬に訪れた大阪府門真市の会社員(52)は「サウナが好きで、SNSを見て初めて来た。歴史がある銭湯が残ってくれてうれしい」と笑顔を見せた。
料金は約3倍に、客単価上昇を図る
ただ、料金は延命湯の閉店時の約3倍にあたる1480円に上がった。都道府県が料金を定める「一般公衆浴場」の対象外の施設になり、今のところは男性客に限定し、女性客のみが利用できる「レディースデー」の実施を検討する。
大沢社長は、「サウナは銭湯の体験価値を高め、客単価を上げることができる。時代に適応した新しい銭湯を目指す」と意気込む。
改装で来店客数が倍増した銭湯も
公衆浴場の形態を維持し、再生を図る銭湯もある。「ユートピア白玉温泉」(大阪市城東区)は2022年、高温になるサウナや、深さ1.4メートルの水風呂を整備し、改装開業した。
2代目オーナーの北出守さん(65)がコロナ禍で客足が減って危機感を強め、改装を決断。東京で人気のサウナ施設を訪れたのを契機に、サウナの充実に活路を見いだした。
改装前は入浴料金を払えば、サウナは無料で利用できたが、現在は入浴料金(600円)とは別に、300円を支払う。常連客のほか、サウナ目的の新規客が増え、来店客数と売り上げは改装前と比べ、倍増した。
サウナ充実の動きは各地に、専門家は「新たな価値」を指摘
「都湯 京都島原」(京都市)や、「湯あそびひろば森温泉」(神戸市)などサウナを充実させ、人気を集める銭湯は各地にある。今年7月には東京・東新宿の「金沢浴場」が、サウナ設備を充実させた「黄金湯 新宿店」に刷新した。東京・錦糸町の老舗銭湯で、20年にサウナを中心に改装オープンした「黄金湯 東京店」の2号店だ。
銭湯業界に詳しい帝国データバンクの飯島大介氏は、「銭湯を従来の公衆衛生施設として維持するのは難しくなっており、サウナのように新たな価値を提供することが重要になってきている」と指摘する。
厚生労働省によると、地域の銭湯にあたる「一般公衆浴場」は24年度末時点で全国に2730施設あり、5年前と比べ2割減った。銭湯は生活に欠かせない施設とされ、入浴料金は現在も、戦後の国民経済の混乱防止を目的に、1946年に制定された物価統制令の唯一の対象となっている。料金の上限は各都道府県が規定しており、大阪府では大人600円だ。



