大阪・関西万博の会場などで運用された電気自動車(EV)バス190台すべてが使用中止となった問題で、大阪メトロは2026年7月16日、経営責任を問い役員らの処分を発表した。本記事では、この事態に至った経緯と問題点を詳しく解説する。
どんなバスなのか
大阪メトロは2022~24年度に「EVモーターズジャパン」(EVMJ)から190台のEVバスを購入した。EVMJは2019年に設立された新興企業で、本社は北九州市にあるが、バスは中国メーカーに委託して製造・輸入していた。
購入した190台のうち、大型と小型計150台は万博関連の輸送に、超小型40台は大阪市内で運行する予約制のオンデマンドバスとして使用された。しかし、万博関連の輸送では2025年4月と7月に接触事故が発生。オンデマンドバスでは9月に中央分離帯に衝突する事故が起きた。
他の納入先でもトラブルが発生したため、国土交通省は2025年9月、EVMJに総点検を指示。全国で販売した317台のうち、113台でブレーキ部品の損傷などの不具合が確認され、85台のリコールを届け出た。
なぜ使用中止を決めたのか
こうした事態を受け、大阪メトロは国が指示した総点検とは別に、2026年1月から独自の点検を開始した。ところが、試験走行中にバスの強度を保つ金属製の部品が破断した。これを「重大な不具合」と捉え、このほかにも潜在的な欠陥・不具合が明らかになったとした。
そのため、多額の費用をかけてバスを点検しても不具合が解消される見通しが立たないと判断。2026年3月に「安全性と長期的な安定性の確立が困難」として、190台すべてを使用しないことを発表した。バスの大半は長期間、大阪市城東区にある大阪メトロの敷地内に保管され、SNS上で「EVバスの墓場」と呼ばれた。
なぜEVMJから購入したのか
大阪メトロの河井英明・前社長は2026年4月の会議で、購入先としてEVMJを選んだ経緯を説明した。それによると、最終検査を日本で実施できることや、低価格であることなどが理由だった。しかし、結果的に安全性に重大な問題が生じた。
何が問題なのか
問題の核心は、新興企業のEVMJが中国メーカーに製造を委託し、品質管理が不十分だった点にある。また、大阪メトロが購入時の評価を適切に行わなかった可能性も指摘されている。さらに、国による総点検指示後も独自点検で新たな不具合が発覚し、安全性の確保が困難であることが明らかになった。
今後の課題
大阪メトロの新社長は2026年7月をめどに検証結果を公表すると表明。すでに補助金返還分を含め損失67億円を計上しており、今後の対応が注目される。また、EVバスは富山県などで保管され、最終的な扱いが決まっていない。
この問題は、公共調達における新興企業の選定基準や、海外製造品の品質管理体制の在り方に一石を投じている。



