マツダは5月、主力の中型スポーツ用多目的車(SUV)「CX―5」を9年ぶりに全面改良した新モデルを発売した。軽快な走りはそのままに後部座席と荷室のスペースを広げ、価格もこのクラスでは手頃な水準に抑えた。子育て世帯が日常使いしやすい一台を目指した。
20、30代を意識した設計
CX―5は、マツダの世界販売の3割弱を占める主力車種だ。2012年発売の初代モデルはマツダが業績不振から抜け出すきっかけとなった。17年にはスタイリッシュな外観の2代目が登場。デザインと高い走行性能が支持され、世界100以上の国と地域で計500万台以上を販売した。
新モデルでは、「これまであまり接点を持てていなかった」という20、30歳代の若者やファミリー層への浸透を狙った。前輪から後輪までの距離「ホイールベース」を11.5センチ延ばし、運転席と後部座席の間の足もとを6.4センチ広げたため、乗り降りだけでなく、チャイルドシートの脱着もしやすい。
荷室は奥行きが4.5センチ広がり、畳んだベビーカーをタイヤを奥に向けて積めるようになった。後部座席の背もたれを前に倒してフラットにすると、奥行き約1メートル84、幅1メートル5の広さとなり、大人2人が寝転がれる。
便利な音声操作と走行性能
最上級モデルには15.6インチの大型モニターが搭載され、米グーグルの音声アシスタントを備え、空調やオーディオ、ナビゲーションシステムを操作できる。システムは車載用の通信を通じて随時更新され、今後、グーグルの生成AI「ジェミニ」も使えるようになる予定だ。
走りは軽快で、排気量2.5リットルのガソリンエンジンに簡易型の「マイルドハイブリッド(HV)」を組み合わせ、アクセルを踏み込むと滑らかに加速する。フロントガラスの両側で屋根を支える柱・ピラーは先代よりも1センチほど細く、視界も広い。低速走行時や駐停車時に周囲360度をモニターで確認できるシステムも標準装備している。
好調な滑り出し
マツダの調査によると、中型サイズのSUVの購入を希望する人の多くが、購入予算として350万~370万円ほどを想定しているという。このため、新モデルは原材料の調達方法を見直し、最安モデルを税込み330万円に抑えた。競合するトヨタ自動車の「RAV4」やSUBARUの「フォレスター」よりも50万~120万円程度安くした。
欧州の環境規制などを考慮し、初代と2代目で人気だったディーゼルエンジン車は廃止し、マイルドHVのガソリン車のみとなったが、発売後1か月の受注台数は1万台を超え、月間2000台の計画を大きく上回る好調な滑り出しだ。来年には、独自開発のHVシステムを搭載したモデルも投入する予定だ。
開発責任者に聞く
開発責任者の山口浩一郎氏は「初代は独自の低燃費技術・スカイアクティブを初めて全面採用し、2代目はより上質でエレガントなデザインに進化した。3代目はさらに長く愛される存在になるように日々の使い勝手に徹底してこだわった」と語る。
力を入れた点について、「デザインの美しさを求めると、車内は狭くなる。ハンドリングを軽快にすると、下からの突き上げが強くなって乗り心地は悪くなる。こういった相反する要素をしっかり両立させた」と説明。具体的には「ダンパーの初期応答性を極限まで高めて、その分、バネを弱めにすることで、軽快な操作感と乗り心地のよさを両立させている。ぜひ一度、乗って体感してほしい」と話した。



