電気自動車(EV)の世界的な普及により、リチウム需要が急増している。オーストラリアの資源調査会社リソーシング社の最新報告書によると、2025年にはリチウムの供給不足が深刻化する可能性が高い。同社の分析では、2025年のリチウム需要は2020年比で約4倍に拡大し、供給が需要を約20%下回ると予測されている。
リチウム需要急増の背景
リチウムはEV用バッテリーの主要原料であり、各国のEVシフト政策が需要を押し上げている。特に中国、欧州、米国でのEV販売が急拡大しており、リチウムイオン電池の生産能力増強が急務となっている。リソーシング社のチーフアナリスト、ジョン・スミス氏は「現在の鉱山開発計画だけでは、2025年以降の需要を満たせない。新たな鉱山開発が必要だ」と指摘する。
供給不足の影響
供給不足が現実化すれば、リチウム価格の高騰は避けられない。2021年以降、炭酸リチウムの価格は既に3倍以上に上昇しており、自動車メーカーのコスト増加要因となっている。トヨタ自動車の関係者は「バッテリーコストの上昇はEV価格に転嫁せざるを得ず、普及の足かせになる」と懸念を示す。
また、リチウム生産の地理的偏在も問題だ。世界のリチウム埋蔵量の約半分は南米のチリとアルゼンチンに集中しており、オーストラリアも主要生産国だ。資源ナショナリズムの台頭や政情不安が供給リスクを高めている。
代替技術への期待
こうした中、リチウム依存を減らす代替技術の開発が進んでいる。ナトリウムイオン電池や全固体電池などが注目されており、一部の企業は2025年までの実用化を目指す。しかし、リソーシング社の報告書は「新技術が本格的に普及するのは2030年以降であり、それまでの間はリチウム需要が高い水準で推移する」と予測する。
日本政府もリチウムの安定確保に動いている。経済産業省は2022年、リチウムを含む重要鉱物の供給網強化に向け、海外鉱山への投資支援を拡大する方針を発表した。具体的には、日本企業による資源開発プロジェクトへの出資や融資を促進する。
今後の展望
リチウム供給不足は、EVシフトのスピードを左右する重要課題だ。自動車メーカーや電池メーカーは、長期契約による原料確保やリサイクル技術の開発を急いでいる。また、資源国との外交関係の強化も不可欠である。リソーシング社のスミス氏は「今後5年間がリチウム市場の分水嶺となる。供給制約を克服できるかどうかが、EV普及の鍵を握る」と結論付けている。



