8代目レクサスESプロトタイプ試乗:SUV全盛時代に挑むプレミアムセダンの完成度
8代目レクサスES試乗:SUV全盛に挑むプレミアムセダン

ビジネス #自動車最前線 SUV全盛のいまセダンで勝負!8代目「レクサスES」プロトタイプに先行試乗で見えた完成度は? 8分で読める 公開日時:2026/06/14 06:30

新型レクサス「ES」のBEVとHEV、計4モデルに試乗した(写真:LEXUS) 小川 フミオ モータージャーナリスト

全長が5140mmまで大型化したイマドキの事情

レクサス「ES」がフルモデルチェンジ。26年6月11日の日本発売を前に、5月にアメリカで試乗した。走りのよさが印象的な、プレミアムサイズのセダンに仕上がっていた。以来、トップモデル「LS」のすぐ下に位置するプレミアムセダンの立ち位置を守り、連綿とモデルチェンジを重ねてきている。ESが基本コンセプトを守ってきた一方、市場は大きく変化。時代はSUV全盛となり、セダンは少数派になってしまった。そこにあって、レクサスがキープコンセプトのフルモデルチェンジを敢行した背景とは、なんだろう。

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簡単に想像できるのは、ポジションの変化だ。2025年の「ジャパンモビリティショー」で発表されたLSのコンセプトモデルは、走るラウンジという言葉がぴったりの、6輪MPVだった。一方、従来ESの下でサイズ的に扱いやすく、価格もこなれていた「IS」は、発表が2013年だから、ちょっと薹(とう)が立ってきた感があるのは事実。

ついに全長5mを超え、5140mmとなった新型レクサス「ES」(写真:LEXUS) 一般ユーザーは「NX」や「RX」、「GX」といったSUV、それに法人もいまや(レクサス・ブランドなら)ミニバンの「LM」を買う時代だ。それでも、セダンにはよさがある、と私は思っている。新型ESは5140mmの全長と2950mmのホイールベースを確保。「ショファードリブン(運転手つき)のニーズにも対応」とレクサス自身が述べるとおり、後席も広々としている。

全長が長くなった背景がじつはある。床下搭載のバッテリーのため1560mmと高めの全高がまず決まり、それでもセダンらしく伸びやかなプロポーションを実現すべく、前後を伸ばして、車体の均整バランスをとった結果、とか。従来型より全長で165mm、ホイールベースは80mm延長された(写真:LEXUS)。日本の、特に東京など混んでいたり道幅が狭かったりするところでのドライブ体験がないので、新型ESの余裕あるサイズのボディは、適切なのか、それともやりすぎなのか、判断は下せなかった。少なくともアメリカの路上では、サイズのおかげもあって存在感があるようで、けっこう注目を浴びていた。

BEVとHEV、全4モデルに試乗

今回の試乗では、BEV(バッテリー電気自動車)とHEV(ハイブリッド車)の計4モデルを体験した。BEVは新開発のプラットフォームを採用し、床下に大容量バッテリーを搭載。一方HEVは、従来のハイブリッドシステムを進化させ、燃費性能と走行性能のバランスを高めている。走り出しから感じたのは、静粛性の高さだ。特にBEVモデルは、モーター駆動ならではの滑らかな加速と、路面ノイズを徹底的に抑えたキャビンが印象的だった。HEVでも、エンジンとモーターの切り替えが自然で、違和感はほとんどない。

ハンドリングも、大型セダンとは思えない俊敏さを持つ。ステアリングの応答性はリニアで、高速道路での車線変更やワインディングロードでも安心感がある。サスペンションは、路面の凹凸をうまく吸収しつつ、車体のロールを適度に抑えている。乗り心地は、プレミアムセダンにふさわしい、しなやかで上質なものだ。

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サイズを感じさせないポテンシャルの高さ

全長5140mmというサイズは、数字だけ見るとかなり大きい。しかし、実際に運転してみると、そのサイズをほとんど感じさせない。特に、BEVモデルはバッテリーを床下に搭載したことで重心が低くなり、コーナリング時の安定性が向上している。また、後輪操舵システムの採用により、最小回転半径も小さく抑えられており、都市部での取り回しも苦にならないだろう。

インテリアも、レクサスらしい高品質な仕上げだ。素材の選び方や組み立ての精度は、ドイツの競合車種にも引けを取らない。後席のスペースは、ロングホイールベースの恩恵で非常に広く、足を組めるほどの余裕がある。シートの座り心地も良く、長時間のドライブでも疲れにくい。

「Eクラス」や「5シリーズ」のライバルとして

新型ESの主な競合は、メルセデス・ベンツEクラスやBMW5シリーズといったプレミアムセダンだ。これらの車種は、いずれも歴史とブランド力を持ち、セダン市場の中心的存在である。ESがこれらに対抗するには、単なるサイズの大きさだけでなく、走りや品質、そしてブランド価値で勝負しなければならない。

今回の試乗で感じたのは、ESが単なる「大きなセダン」ではなく、しっかりとプレミアムセダンとしての完成度を高めていることだ。特にBEVモデルは、電動化時代における新たな選択肢として、十分な魅力を持っている。HEVモデルも、実用性と環境性能を両立した現実的な選択肢として、多くのユーザーに受け入れられるだろう。

SUV全盛の時代にあえてセダンで勝負するレクサスの戦略は、一見すると逆行しているように見える。しかし、セダンにはSUVにはない、低い重心による安定した走りや、エレガントなスタイリングといった独自の価値がある。新型ESは、その価値をしっかりと体現している。日本発売が待ち遠しい一台だ。