世界の電気自動車(EV)市場が急拡大する中、日本の自動車メーカーはこれまでの戦略の見直しを迫られている。中国や欧米メーカーがEVシフトを加速させる一方で、日本勢の出遅れが指摘されて久しい。しかし、各社はここにきて本格的なEV攻勢に乗り出し始めた。
トヨタ、EV生産体制を抜本改革
トヨタ自動車は2026年までにEVの世界販売を年150万台に引き上げる目標を掲げる。そのために、EV専用の生産ラインを導入し、従来のガソリン車との混流生産から脱却する方針だ。また、次世代電池の開発にも注力し、航続距離の延長とコスト削減を同時に実現する計画である。
同社はこれまでハイブリッド車(HV)を軸にした戦略で成功を収めてきたが、EVシフトの流れには懐疑的だった。しかし、市場の変化に対応するため、方針転換を余儀なくされた。トヨタの豊田章男社長は「EVは重要な選択肢の一つだが、顧客の選択肢を狭めるべきではない」と述べつつも、EV投資を積極化している。
日産、中国市場でのEV攻勢
日産自動車は中国市場でEV攻勢を強めている。同社は中国の合弁会社を通じて、2023年までに新型EV「アリア」を投入し、その後も続々とEVモデルを投入する計画だ。日産は世界初の量産EV「リーフ」で先行したものの、その後は中国メーカーの台頭に押され気味だった。しかし、アリアを皮切りに再び存在感を示そうとしている。
日産の内田誠社長は「中国は世界最大のEV市場であり、当社にとって最重要市場の一つだ」と語り、中国向けEVのラインアップを拡充する方針を示した。
ホンダ、GMとの提携でEV開発加速
ホンダは米ゼネラル・モーターズ(GM)との提携を活用し、EV開発を加速している。両社は2024年から北米市場向けに共同開発したEVを投入する予定で、ホンダはGMのバッテリー「ウルティウム」を採用する。これにより、開発コストを抑えつつ、競争力のあるEVを早期に市場投入する狙いだ。
ホンダの三部敏宏社長は「単独ではEV開発に限界がある。GMとの協業により、スケールメリットを生かす」と説明する。また、ホンダは独自のEVプラットフォームの開発も進めており、2020年代後半には自社技術によるEVを投入する計画だ。
電池調達の多角化が急務
EVシフトの鍵を握るのが電池の安定調達だ。日本メーカーはこれまでパナソニックなど国内電池メーカーとの関係を強めてきたが、世界的な電池需要の高まりを受け、調達先の多角化が急務となっている。
トヨタは中国の電池大手CATL(当代安培科技)や比亜迪(BYD)との提携を強化し、日産は中国の遠景能源(Envision Group)と合弁会社を設立するなど、各社は中国勢との連携を深めている。また、ホンダは韓国のLG化学との間で電池調達契約を結ぶなど、調達網の拡大を図っている。
一方で、日本政府も電池産業の育成に乗り出している。経済産業省は2030年までに国内の電池生産能力を100ギガワット時に引き上げる目標を掲げ、補助金などで支援する方針だ。
日本メーカーの生き残り戦略
EVシフトの加速は、日本メーカーにとって死活問題だ。市場調査会社のデータによると、2022年の世界EV販売台数は前年比55%増の約1000万台に達し、新車販売に占めるEVの割合は10%を超えた。この流れは今後も加速するとみられる。
日本メーカーはこれまでHVで先行し、EVでは後れを取ってきた。しかし、HVの需要が頭打ちになる中、EVへの本格参入は避けられない。各社は電池調達の多角化や生産体制の改革、提携戦略など、さまざまな手段で巻き返しを図っている。
専門家は「日本メーカーが生き残るためには、EVのコスト競争力と独自性を両立させる必要がある」と指摘する。また、ソフトウェアやサービス面での差別化も重要だ。各社の戦略が実を結ぶかどうかは、今後の市場動向次第と言えるだろう。



