政府は電気自動車(EV)用蓄電池の国内生産を拡大するため、新たな補助金制度を創設する方針を固めた。2030年までに年間生産能力を現在の約20ギガワット時から5倍の100ギガワット時に引き上げる目標を掲げ、エネルギー安全保障の観点からも重要性が高まる蓄電池のサプライチェーン強化を図る。
補助金制度の概要
経済産業省が中心となり、2024年度から新たな補助金制度を開始する。対象はEV用電池の製造設備投資や、リチウムなどの重要鉱物の確保、リサイクル技術の開発など。補助率は設備投資額の3分の1から2分の1程度を想定している。
政府は2022年8月に閣議決定した「蓄電池産業戦略」で、2030年までに国内の蓄電池製造基盤を年産100ギガワット時に拡大する目標を掲げた。しかし、現状は日系メーカーの海外生産が中心で、国内生産能力は目標達成にほど遠い。今回の補助金制度は、目標達成に向けた具体的な政策の一つとなる。
官民連携でサプライチェーン強化
政府は補助金制度に加え、官民連携で重要鉱物の安定確保を進める。経済安全保障推進法に基づき、蓄電池を「特定重要物資」に指定。リチウムやニッケル、コバルトなどの鉱山開発や精製事業に対する支援も検討する。
また、使用済み電池からのリサイクル技術の開発も促進。国内での資源循環を確立し、海外依存度の低減を目指す。
海外勢の動きと日本の競争力
世界のEV用電池市場は中国のCATL(寧徳時代新能源科技)や韓国のLGエナジーソリューション、サムスンSDIなどがシェアを拡大している。日本勢ではパナソニックがテスラ向けに供給しているが、全体のシェアは低下傾向にある。
政府は2030年までに国内の蓄電池関連市場を年15兆円規模に拡大する目標も掲げており、今回の補助金制度で日本企業の競争力強化を後押しする方針だ。
専門家の見方
自動車業界アナリストの田中一郎氏は「EVシフトが加速する中、電池の国内生産基盤を強化することは産業政策として不可欠だ。ただし、補助金だけでは不十分で、技術開発や人材育成も同時に進める必要がある」と指摘する。
政府は2023年度補正予算に蓄電池関連の支援策として約3,000億円を計上しており、今回の新制度も財源の一部を活用する見通しだ。



