EVシフトの加速でガソリン車部品市場が急縮小
電気自動車(EV)への移行が世界的に加速する中、ガソリン車向け部品を主力とする日本のサプライヤーが深刻な危機に直面している。日本自動車工業会のデータによると、2023年の国内自動車生産台数は約800万台で、うちEVの比率はわずか2%程度だが、政府は2035年までに新車販売の100%を電動車とする目標を掲げる。この政策により、エンジンやトランスミッション、燃料ポンプなど、ガソリン車に不可欠な部品の需要が急減すると予想される。
野村総合研究所の試算では、2030年には国内自動車部品市場が2020年比で最大50%縮小する可能性がある。特に、エンジン関連部品を生産する中小サプライヤーへの影響は深刻で、事業継続が困難になる企業が続出する見通しだ。
サプライヤーの生き残り戦略
こうした状況下で、多くの部品メーカーはEV向け部品への転換や、異業種への進出を模索している。例えば、デンソーはEV向けのインバーターやモーターの生産に注力し、2030年までにEV関連売上高を現在の3倍に引き上げる計画だ。一方、中小企業では、経営資源の限界から転換が進まず、廃業やM&Aの対象となるケースが増えている。
業界団体の日本自動車部品工業会は「サプライヤーの約7割が従業員300人未満の中小企業で、EVシフトへの対応が急務」と指摘。政府も中小企業の事業転換を支援する補助金制度を設けているが、申請手続きの煩雑さや、転換先の市場規模が不透明なことから、活用が進んでいない。
雇用への影響と地域経済の課題
部品サプライヤーの衰退は、雇用や地域経済にも大きな打撃を与える。経済産業省の調査によると、自動車部品産業の従業員は全国で約90万人に上り、その多くが地方都市に集中している。特に、愛知県や静岡県、岐阜県など東海地域では、自動車関連産業が地域経済の基盤を支えており、雇用喪失による経済的損失は計り知れない。
愛知県の担当者は「県内の自動車部品メーカーの約半数がEVシフトに対応できず、5年以内に廃業や規模縮小を余儀なくされる可能性がある」と警鐘を鳴らす。地域の雇用を守るためには、サプライヤーの事業転換支援に加え、新たな産業の誘致や、労働者の再教育プログラムの拡充が急務となる。
国際競争力の低下リスク
日本の部品サプライヤーがEVシフトに遅れを取れば、国際競争力の低下も懸念される。中国や韓国、欧州の部品メーカーは早くからEV向け部品の開発に注力し、すでに市場で優位に立っている。例えば、中国のCATLや韓国のLGエナジーソリューションは、EV用バッテリーで世界シェアの過半数を占める。日本企業がこの分野で巻き返すには、技術革新と大規模投資が不可欠だが、資金力の限られる中小企業には難しいのが実情だ。
自動車アナリストは「日本の部品産業はこれまでガソリン車の高品質な部品供給で強みを発揮してきたが、EV時代にはその強みが通用しなくなる。早急な戦略転換が必要だ」と指摘する。
政府の支援策と今後の展望
政府は2023年度補正予算で、自動車部品サプライヤーの事業転換を支援するための基金を1000億円規模で設立した。この基金を活用し、EV向け部品や水素関連技術など、成長分野への参入を後押しする方針だ。また、中小企業が共同で研究開発を行う「コンソーシアム」の形成を促進し、技術力の向上を図る。
しかし、専門家からは「支援策の効果が現れるまでに時間がかかる一方、市場の変化は速い。サプライヤー自身がスピード感を持って行動しなければ、支援があっても生き残れない」との声が上がる。今後の自動車産業の行方は、部品サプライヤーの変革にかかっていると言える。



