世界の電気自動車(EV)市場に異変が生じている。2024年の世界EV販売台数は、前年比で減少に転じる見通しだ。長年にわたって成長を続けてきたEV市場だが、主要市場である中国の減速や、各国の補助金縮小が影響している。
中国市場の減速が全体を押し下げ
EV販売の最大市場である中国では、2023年までの急成長が一服。政府の購入補助金が段階的に縮小されたことに加え、景気減速が消費者の購買意欲を冷やしている。中国汽車工業協会のデータによれば、2024年上半期のEV販売台数は前年同期比で約5%減少した。これが世界全体の数字を押し下げる要因となっている。
欧州でも状況は同様だ。ドイツやフランスなど主要国でEV補助金が削減または打ち切りとなり、販売が鈍化。2024年の欧州EV販売台数は前年比で10%以上の減少が見込まれている。一方、米国ではインフレ抑制法(IRA)による税額控除が需要を下支えしているが、それでも成長率は鈍化傾向にある。
メーカー各社が戦略転換を迫られる
販売減速を受け、自動車メーカー各社はEV戦略の見直しを余儀なくされている。テスラは2024年初頭に値下げを実施し、シェア維持を図るが、利益率は悪化。フォードやゼネラルモーターズ(GM)はEV投資計画を縮小し、ハイブリッド車(HV)への回帰を表明した。トヨタ自動車は「EV一辺倒ではなく、マルチパスウェイ戦略が正しかった」とコメントし、HVとEVのバランス重視を強調している。
市場アナリストは「EVシフトは不可逆的だが、一時的な調整局面に入った」と指摘。補助金依存から自立した市場へ移行する過程で、需要の踊り場が生じているとの見方だ。
今後の展望:充電インフラと価格競争力が鍵
長期的には、EV市場は再び成長軌道に乗ると予想される。その鍵を握るのは、充電インフラの整備とバッテリーコストの低減だ。中国や欧州では、急速充電器の設置が加速しており、航続距離への不安解消につながっている。また、バッテリー価格は2023年から2024年にかけて約20%低下しており、EVの価格競争力が向上しつつある。
日本でも、経済産業省が2035年までに新車販売の100%を電動車とする目標を掲げるが、現状ではEV比率は2%にとどまる。充電インフラの整備や補助金の継続が課題だ。
国際エネルギー機関(IEA)の報告書によれば、2024年の世界EV販売台数は約1700万台と予測され、前年の1800万台から減少する見込み。ただし、2025年以降は再び増加に転じ、2030年には年間4000万台を超えるとの予測もある。



