世界的な電気自動車(EV)シフトの加速により、ガソリン車のエンジンやトランスミッションなどの部品を製造してきたサプライヤーが深刻な存続危機に直面している。業界関係者によると、2025年までに国内の部品メーカーの約3割が事業転換を迫られる可能性があるという。これは、自動車産業の100年に一度の変革期において、従来のビジネスモデルが通用しなくなることを意味する。
エンジン部品需要の急減とサプライヤーへの影響
日本自動車部品工業会の調査によると、2023年の国内エンジン部品出荷額は前年比15%減少し、この傾向は今後も続くと予想される。特に、ピストンやシリンダーヘッド、燃料噴射装置など、内燃機関に特化した部品メーカーは、EVの普及に伴い需要が半減する見通しだ。ある中堅部品メーカーの幹部は「エンジン部品だけで売上高の7割を占める当社は、このままでは5年以内に事業継続が困難になる」と危機感を募らせる。
新たなビジネスモデルへの転換事例
こうした状況下で、一部のサプライヤーは生き残りをかけて新分野への進出を加速している。例えば、愛知県に本社を置くA社は、エンジン部品の精密加工技術を活かし、EV用モーターケースやインバーターの冷却部品の製造に乗り出した。同社の社長は「これまでの技術をEV向けに応用することで、新たな収益源を確保できた」と語る。また、岐阜県のB社は、水素エンジンや燃料電池車向けの部品開発に注力し、従来のガソリン車部品からの転換を図っている。
政府の支援策と業界再編の動き
経済産業省は2024年度から、部品サプライヤーの事業転換を支援するための補助金制度を拡充する方針だ。具体的には、EV関連設備への投資や技術開発に対して最大で補助率3分の2、上限5億円の支援を行う。しかし、業界アナリストは「支援だけで全ての企業が生き残れるわけではない。今後、業界再編が加速し、生き残る企業と淘汰される企業の二極化が進むだろう」と指摘する。
海外市場での競争激化と日本サプライヤーの課題
中国や欧州ではEVシフトがさらに急速に進んでおり、日本国内のサプライヤーも海外市場での競争にさらされている。中国のEV部品メーカーは低コストで高品質な製品を供給しており、日本企業は価格競争で劣勢に立たされている。ある業界団体の幹部は「日本メーカーは品質で勝負してきたが、EV部品では価格競争に巻き込まれている。差別化が急務だ」と訴える。
今後の展望とサプライヤーの生き残り戦略
専門家は、サプライヤーが生き残るためには、単なる部品供給からシステム全体の最適化提案へとビジネスモデルを転換する必要があると指摘する。例えば、モーターとインバーター、バッテリー管理システムを統合したパッケージ提案や、車両の軽量化に貢献する素材開発などが求められる。また、M&Aによる規模拡大や異業種連携も重要な戦略となる。



