電気自動車(EV)への移行が加速する中、自動車産業の雇用に暗雲が垂れ込めている。特にエンジンやトランスミッションなど内燃機関関連の部品を手掛けるメーカーでは、需要減少に伴う人員削減の動きが広がっている。経済産業省の試算によれば、2030年までに国内の自動車部品産業で約8万人の雇用が失われる可能性があるという。
EVシフトで変わる部品構成
EVはガソリン車と比較して部品点数が約半分とされる。エンジン、燃料タンク、排気システムなどが不要になる一方で、モーターやバッテリー、インバーターなどの新たな部品が必要となる。この構造変化により、既存の部品メーカーは事業の転換を迫られている。
大手部品メーカーのデンソーは、2025年までにエンジン関連部品の生産を段階的に縮小し、電動化関連事業へのシフトを加速する方針を発表。同社は「電動化対応部品の開発にリソースを集中する」とコメントしている。また、アイシンもトランスミッション工場の一部を電動化部品の生産に切り替える計画を明らかにした。
中小部品メーカーの苦境
大手に比べ、中小の部品メーカーは転換が難しい。エンジンバルブやピストンリングなどを専門に生産してきた企業は、EV化で需要がなくなる主要部品を抱えている。ある部品メーカーの経営者は「EVシフトは死活問題。新たな事業を模索しているが、資金や技術の壁が高い」と打ち明ける。
業界団体の調査によると、部品メーカーの約3割がEV関連の受注を獲得できておらず、今後の事業継続に不安を感じているという。特に従業員100人未満の小規模企業では、その割合が4割を超える。
政府の支援策と課題
経済産業省は、自動車部品メーカーの事業転換を支援するため、補助金や税制優遇措置を拡充する方針だ。具体的には、EV向け部品の研究開発や生産設備の導入に対して最大50億円の補助を検討している。
しかし、専門家は「支援策だけでは雇用の減少を食い止められない」と指摘する。自動車産業の雇用全体で見れば、EV化により新たな雇用が生まれる分野もあるが、その数は限定的だ。例えば、バッテリー生産では新たな雇用が期待されるが、エンジン関連で失われる雇用を補うには至らない。
地域経済への影響
自動車部品メーカーは全国各地に立地しており、特に地方の雇用を支えてきた。愛知県や静岡県、群馬県などでは、自動車産業が地域経済の中心だ。ある地方自治体の担当者は「部品メーカーの撤退や縮小は、地域の雇用や税収に深刻な影響を与える」と懸念する。
業界関係者の間では、今後10年で自動車部品メーカーの統廃合が進むとの見方が強い。電動化対応が遅れた企業は、生き残りが難しくなる可能性がある。一方で、早期にEV関連事業に参入した企業は成長が期待される。



