EV需要拡大がもたらす資源争奪戦
電気自動車(EV)の世界的な普及により、リチウムイオン電池に使用されるリチウム、コバルト、ニッケルなどのレアメタル需要が急拡大している。国際エネルギー機関(IEA)の予測によれば、2030年までにリチウム需要は現在の約10倍に達する可能性がある。この需要増に対応するため、鉱山開発や精製能力の拡大が急ピッチで進められているが、供給が需要に追いつかず、価格の高騰が続いている。
供給網の地政学的リスク
レアメタルの供給は特定地域に偏在しており、地政学的リスクが顕在化している。リチウムはオーストラリアとチリで世界生産の約7割を占め、コバルトはコンゴ民主共和国に約7割が集中する。日本経済新聞の報道によると、日本企業はこれらの資源を中国経由で調達するケースが多く、供給途絶リスクが指摘されている。経済産業省は2022年に策定した「蓄電池産業戦略」の中で、2030年までに国内の蓄電池生産能力を現在の約10倍となる150GWhに引き上げる目標を掲げるが、原料調達の多角化が課題となっている。
リサイクル技術の進展と課題
供給網の脆弱性を補うため、使用済み電池からのリサイクル技術の開発が進んでいる。住友金属鉱山は、リチウムイオン電池からコバルトやニッケルを高効率で回収する技術を実用化し、2025年までに年間処理能力を現在の3倍に拡大する計画だ。しかし、リサイクルコストは新鉱石からの採掘に比べて依然として高く、採算性の向上が課題である。また、回収された材料の品質が新品と同等でない場合があり、電池メーカー側の受け入れ態勢も整っていない。
自動車メーカーの調達戦略見直し
大手自動車メーカーは、資源の安定確保に向けて鉱山への直接投資や長期契約を加速している。トヨタ自動車は2023年、豪州のリチウム鉱山会社と長期供給契約を締結し、日産自動車はマダガスカルでコバルト鉱山開発に参画すると発表した。また、パナソニックは米国でリチウム精製工場の建設を検討しており、サプライチェーンの短縮化を図る。一方で、新興メーカーの台頭により、資源争奪戦は一層激化しており、中小企業の調達難が懸念されている。
政府の支援と国際協調
日本政府は、重要鉱物の安定供給確保に向けて、国際的な枠組みづくりを推進している。2023年に設立された「重要鉱物サプライチェーン強化官民協議会」では、官民連携で資源探査やリサイクル技術開発を支援する方針が示された。また、米国やオーストラリア、インドなどと協力し、中国に依存しないサプライチェーンの構築を目指す。しかし、これらの取り組みが実を結ぶまでには時間がかかり、短期的な供給不安は解消されない見通しだ。



