欧州自動車メーカー各社が、電気自動車(EV)の販売減速を受けて戦略の見直しを迫られている。これまで積極的にEVシフトを推進してきたが、需要の伸び悩みや中国メーカーの台頭により、計画の修正を余儀なくされている。
販売減速の実態
欧州自動車工業会(ACEA)のデータによると、2025年上半期の欧州新車販売台数に占めるEVの割合は約20%で、前年同期の22%から低下した。特にドイツでは補助金打ち切りが響き、EV販売が前年比で30%減少した。フォルクスワーゲン(VW)は2026年までにEV販売比率を25%に引き上げる目標を掲げていたが、現状は15%程度にとどまっている。
VWのCEOは「需要の回復には時間がかかる。内燃機関車の販売も継続し、収益性を確保する」とコメント。メルセデス・ベンツも2030年までに主要市場でEVのみの販売を目指していたが、目標を撤回し、内燃機関車のラインアップを維持する方針に転換した。
中国勢の台頭と価格競争
欧州メーカーの苦境を加速させているのが、中国メーカーの攻勢だ。BYDやMGなど中国ブランドの欧州での販売台数は2025年に前年比50%増を記録。特に小型SUVの分野で競争が激化しており、価格面で優位に立つ中国勢がシェアを拡大している。欧州委員会は中国製EVに対する関税引き上げを検討しているが、中国メーカーは欧州内での生産拠点設立を進めており、影響は限定的とみられる。
調査会社IHS Markitのアナリストは「欧州メーカーはコスト競争力の向上と、ソフトウェアやバッテリー技術での差別化が急務」と指摘する。
戦略見直しの具体策
各社は具体的な戦略見直しに動いている。VWは2025年7月、次世代EVプラットフォーム「SSP」の量産開始を2028年に延期すると発表。開発資源を既存のプラットフォーム改良に振り向け、コスト削減を優先する。ステランティスは欧州工場でのEV生産を一部縮小し、代わりにハイブリッド車の生産を増やす計画だ。また、ルノーは内燃機関車とEVの共同プラットフォームを開発し、柔軟な生産体制を構築する。
一方、BMWはEV専用プラットフォームを堅持しつつ、水素燃料電池車の開発にも注力。同社のCTOは「一つの技術に依存しないことが重要」と述べている。
今後の見通し
欧州のEV市場は長期的には成長が見込まれるものの、短期的な不透明感は強い。EUの2035年までの内燃機関車新車販売禁止目標は維持されているが、業界からは柔軟な対応を求める声が上がっている。自動車アナリストは「欧州メーカーが生き残るには、中国市場での競争力強化と、欧州内でのコスト削減の両立が必要」と分析する。
欧州自動車業界は今、大きな転換点にある。EVシフトの加速から減速への方向転換は、業界の構造を変える可能性がある。



