欧州連合(EU)が中国製電気自動車(EV)に対する関税を最大45%に引き上げる方針を固めたことで、中国のEVメーカーの欧州市場進出戦略が岐路に立たされている。EU委員会は7月4日までに暫定関税を発動する見通しで、中国メーカーは対応を迫られている。
BYD、トルコ工場建設で関税回避
中国最大手のEVメーカーBYD(比亜迪)は、トルコに10億ドル(約1570億円)を投じて年産15万台の工場を建設する計画を発表した。トルコはEUとの関税同盟により、同国で生産されたEVはEU域内に無関税で輸出できる。BYDはこれにより、EUの関税引き上げの影響を回避する狙いだ。
BYDの広報担当者は「トルコは欧州市場への玄関口として戦略的に重要だ」とコメントしている。同社は既にハンガリーにも工場を建設中で、欧州での生産能力を拡大している。
他の中国メーカーも対応模索
中国のEVメーカー、上海汽車集団(SAIC)や吉利汽車(Geely)も、EUの関税引き上げに対応するため、欧州での現地生産を検討している。SAICは既に欧州向けのEV生産を開始しており、吉利はボルボやポールスターを通じて欧州市場に参入している。
一方、中国のEV新興メーカーである小鵬汽車(Xpeng)や蔚来汽車(NIO)は、まだ欧州での生産拠点を持たず、関税引き上げの影響を直接受ける可能性が高い。両社は欧州での販売網を拡大中だが、価格競争力が低下する恐れがある。
EUの狙いと中国の反応
EU委員会は、中国製EVに対する補助金の影響を調査した結果、関税引き上げを決定した。EUの報道官は「公正な競争環境を確保するため、不当な補助金に対抗する必要がある」と述べている。中国商務省はこれに対し「保護主義的な措置であり、貿易摩擦を引き起こす」と反発している。
中国のEV輸出は急増しており、2023年には前年比約80%増の約120万台に達した。このうち約4分の1が欧州向けとされ、EUの関税引き上げは中国のEV産業に大きな打撃となる可能性がある。
今後の展望
EUの関税引き上げは、中国EVメーカーの欧州市場戦略を大きく変える可能性がある。現地生産を進める企業は関税の影響を回避できるが、多額の投資が必要となる。一方、現地生産を持たない企業は、価格競争力の低下や市場シェアの縮小に直面する恐れがある。
専門家は「中国メーカーは欧州での生産拠点を増やすか、第三国経由で関税を回避する戦略を取るだろう」と予測している。また、日本や韓国の自動車メーカーも、中国製EVの競争力低下により、欧州市場での競争が激化する可能性がある。



