中国の電気自動車(EV)最大手である比亜迪(BYD)が日本市場で苦戦している。2024年1月から7月までの新車登録台数は約1000台にとどまり、同社が年初に掲げた年間販売目標3万台を大幅に下回るペースだ。この低迷は、日本市場特有の販売チャネルや消費者のブランド認知不足、充電インフラの課題などが要因とみられる。
目標達成は困難な状況
BYDは2023年に日本市場に本格参入し、2024年には年間3万台の販売を目指すと発表していた。しかし、2024年上半期の販売実績は約800台で、7月単月でも約200台と伸び悩んでいる。このペースが続けば、年間販売台数は2000台にも満たない可能性がある。業界関係者は「目標達成は極めて困難」と指摘する。
BYDの日本法人は、販売低迷の理由について「ブランド認知度の向上に時間がかかっている」と説明する。同社は2024年に入り、東京や大阪など大都市圏で店舗を拡大し、試乗会やイベントを開催してきたが、効果は限定的だ。
日本市場の壁:販売チャネルとブランド力
日本市場では、トヨタや日産など国内メーカーが強固な販売網とブランド力を持つ。BYDは2023年から正規ディーラーを通さない直販方式を採用したが、これが逆に販売拡大の妨げとなっているとの声もある。日本の消費者は、実店舗での対面販売やアフターサービスの充実を重視する傾向が強く、直販方式では安心感を得にくい。
さらに、BYDのEVは「ATTO 3」や「ドルフィン」など、価格帯が300万円台後半から400万円台と、国産EVと比べて大きな差がない。日産「リーフ」や三菱「eKクロスEV」など競合車種が存在する中で、価格面での優位性が薄れている。
充電インフラの課題
日本国内の急速充電器の設置数は約1万基と、中国や欧州に比べて少ない。BYDは充電サービス「BYDチャージ」を提供しているが、対応する充電器の数は限られている。特に地方では充電スポットが不足しており、長距離移動の不安が購入意欲を削いでいる。
一方、BYDは2024年6月に、日本で初めてとなる急速充電器の自社設置を発表。東京・港区に設置した120kWの急速充電器を皮切りに、2025年末までに全国で100基を設置する計画だ。しかし、これでも課題解決には不十分との見方が強い。
自動車アナリストの山田健一氏は「日本市場でEV普及が進まない根本的な原因は、充電インフラの不足と消費者の航続距離不安にある。BYDに限らず、海外メーカーはこの壁を乗り越えられずにいる」と指摘する。
今後の戦略と展望
BYDは2025年までに日本で100店舗の展開を目指しているが、現在は約30店舗にとどまる。また、2024年秋にはミニバンタイプのEV「M6」を投入する計画で、ファミリー層の取り込みを図る。さらに、2025年には航続距離を延ばした新型車の投入も検討している。
しかし、日本市場の厳しい競争環境を考えると、BYDが短期間で販売を急拡大するのは容易ではない。中国市場で圧倒的なシェアを誇る同社だが、日本では「安かろう悪かろう」のイメージを払拭できるかが鍵となる。また、日本政府のEV購入補助金が2024年度から縮小されたことも、販売にマイナス影響を与えている。
BYDジャパンの担当者は「日本市場は非常に重要。長期的な視点でブランド価値を高めていきたい」と述べているが、現状のペースでは目標達成はおろか、市場での存在感を高めることすら難しいのが実情だ。



