中国自動車業界で電気自動車(EV)へのシフトが停滞し、ガソリン車への回帰現象が顕在化している。2024年のEV販売台数は前年比でわずか12%増の約680万台にとどまり、2023年の35%増から急減速した。業界関係者によると、「政府の購入補助金が段階的に縮小されたことや、急速充電器の不足が消費者のEV離れを加速させている」という。
補助金縮小と充電不足が消費者のEV離れを招く
中国政府は2023年末にEV購入補助金を従来の半額に削減。さらに、2025年には完全廃止を予定している。この政策転換が消費者の購買意欲に直撃した。また、中国全土の公共充電器は2024年時点で約260万台と、EV保有台数(約2000万台)の13%にすぎず、特に地方部での充電環境の整備が遅れている。中国自動車工業協会の李副会長は「充電インフラの整備が需要に追いつかず、消費者の間で『航続距離不安』が再燃している」と指摘する。
中国自動車大手の戦略転換:ガソリン車向け投資を再強化
こうした状況を受け、中国の自動車大手は戦略の見直しを迫られている。比亜迪(BYD)は2024年第4四半期にガソリン車の新型モデルを3年ぶりに発売。同社の広報担当者は「EV市場の成長鈍化を踏まえ、ハイブリッド車とガソリン車のラインアップを拡充する」と述べた。また、上海汽車(SAIC)は2025年からガソリン車向けエンジン工場の増設を計画。一方、新興EVメーカーの蔚来汽車(NIO)は2024年の販売台数が目標の80%にとどまり、資金調達の難航が報じられている。
市場全体の成長鈍化と地域格差
中国自動車市場全体では、2024年の新車販売台数は前年比2%増の約2600万台と低成長に。EVの普及率は25%に達したものの、沿海部と内陸部では格差が大きく、上海や北京ではEV比率が40%を超える一方、西部のチベット自治区では10%未満となっている。中国政府は充電インフラ整備に2025年までに1000億元(約2兆円)を投資する計画だが、効果が現れるのは早くとも2026年以降とみられる。
海外メーカーの中国市場戦略にも影響
中国のEVシフト停滞は、海外自動車メーカーの戦略にも波及している。ドイツのフォルクスワーゲンは中国でのEV販売目標を下方修正し、2025年の目標を当初の200万台から150万台に引き下げた。同社の中国事業責任者は「中国市場の変化に迅速に対応するため、ガソリン車とEVの両軸で投資を継続する」とコメント。日本メーカーも影響を受けており、トヨタは中国でのEV専用工場の稼働開始を2026年に延期。日産は中国市場向けの新型EV投入計画を一部見直す方針を示している。
今後の展望:EVシフトは長期トレンドか一時的な調整か
専門家の間では、今回のEVシフト停滞が一時的な調整局面か、長期的なトレンド転換かで見解が分かれている。清華大学の陳教授は「充電インフラの整備が進めば、EV需要は再び拡大する。しかし、政府補助金の完全廃止後は、市場メカニズムによる淘汰が進むだろう」と予測。一方、スタンフォード大学の中国自動車市場専門家である張研究員は「ガソリン車回帰は短期的な現象にすぎず、技術革新とコスト低下がEVシフトを再加速させる」と楽観視する。中国自動車市場の行方は、世界のEV産業全体の動向を左右する重要な試金石となる。



