三菱UFJ銀行、三菱UFJインフォメーションテクノロジー、レッドハット、日本IBMの4社は7月6日、金融システムの開発・運用全体に人工知能(AI)技術を本格適用する戦略的パートナーシップを締結した。このパートナーシップは、設計、実装、テストといった開発工程だけでなく、運用・保守を含むシステムライフサイクル全体にAIを組み込み、金融システムの開発・運用の在り方を根本から変革することを目的としている。4社は既に進行中の複数の取り組みやプロジェクトをこの枠組みに統合し、実証と実装を加速させる方針だ。
背景:金融システムの複雑化と人的工数の課題
金融業界は顧客ニーズの高度化やサービス提供スピードの向上が競争力を左右する環境にある。一方で、金融システムは長年の高度化・複雑化により、開発・運用・保守の各工程で多大な人的工数を要する構造となっている。アジリティと品質の両立、運用効率の向上が重要な経営課題となっている。
三菱UFJ銀行は従来から、IT子会社の三菱UFJインフォメーションテクノロジーを通じて開発モダナイゼーションや運用高度化に取り組んできた。今回のパートナーシップはこれらの取り組みを基盤に、AI技術を前提とした新たな開発・運用モデルへ進化させるものだ。
AI駆動型開発への転換
4社はパートナーシップを通じて、現行サービスの維持・保守に多大な工数を要する従来型開発手法から脱却し、設計・実装・テストといった開発工程全体をAIが高度に支援・自動化するAI駆動型開発手法への転換を加速する。さらに、三菱UFJ銀行が先行して進めてきた開発モダナイゼーションの知見を活用し、分散系システムだけでなくメインフレーム領域にもAI技術の適用範囲を拡大。全プラットフォームにわたる開発効率と品質の抜本的な向上を図る。
また、システム開発に加え、運用・保守領域にもAI技術を本格適用し、可観測性の向上や自動化を通じてシステムライフサイクル全体の最適化とレジリエンス(回復力)の強化を実現する。
各社の役割と具体的な取り組み
三菱UFJ銀行は、IT子会社である三菱UFJインフォメーションテクノロジーを通じて、開発人材の流動性向上のための開発モダナイゼーションや、システム領域のレジリエンス向上を目的とした運用高度化に取り組む。品質確保に大きな人的負荷が伴っていた開発手法を進化させ、AI駆動型開発手法への転換を積極的に推進するため、レッドハット、日本IBMと協働で実証・実装を進めている。
レッドハットは、「Red Hat OpenShift」や「Red Hat AI」を含む同社のハイブリッドクラウドプラットフォーム全体において、AI駆動型開発をベースにした新たな開発手法の標準化を共同で推進。パブリッククラウドとローカル環境の双方におけるAI活用を対象に、セキュリティおよびガバナンス要件を踏まえた包括的な検討を進めている。
日本IBMは、AI専門家チーム(AI Lab)が三菱UFJ銀行の勘定系システムモダナイゼーションプロジェクトをはじめとする複数のシステム開発プロジェクトに参画し、AI適用によるシステム開発を共同で実施。同社のコンサルティング力、テクノロジー、知見を活用し、IBM watsonxなどに代表される開発領域でのAI活用知見も踏まえながら、システム開発・運用領域におけるAI技術の適用可能性を幅広く検討する。また、三菱UFJ銀行における次世代運用検討にも参画し、レジリエンス向上を実現するアーキテクチャの検討を進めている。
今後の展望
今後、4社はパートナーシップを通じて得られる知見や成果を継続的に発展させ、三菱UFJ銀行における金融システムの変革を着実に推進するとともに、金融業界全体のシステム開発・運用の新たなモデル確立に貢献する方針だ。



