建設業界で「ICT建機」と呼ばれる次世代型建設機械の導入が広がっている。深刻化する人手不足の解消や安全性向上による労災リスク低減が期待される中、京都・南区の福田建設工業(従業員20人)は中小企業ながら積極的に活用し、昨年度、京都労働局の「ベストプラクティス企業」に選ばれた。
ICT建機導入の背景と課題
同社は2022年にICT建機を導入し、今年3月に3台目を購入。京都労働局労働基準部は「中小ではかなり多い数」と評価する。国は業界の「働き方改革」の切り札として導入を後押しするが、中小企業では普及が進まない。現場監督で常務の福田聆さん(35)は「コストと人材という二つの理由がある」と話す。
聆さんは大学卒業後、米国の不動産会社や外資系化粧品会社でキャリアを積み、コロナ禍を機に実家へ戻り2021年春に入社。先に入社していた経理担当でダンプトラックも操る取締役の晶さん(34)と職場のデジタル化を進める中でICT建機の活用にたどりついた。「ベテランの経験や勘に頼りすぎており、高齢化を見据えた危機感も強かった」と振り返る。
コストと人材の壁を克服
コスト面では、取り付け型の機器でも数百万円、建機ごと購入すれば数千万円かかる。しかし聆さんは「中小企業庁の省力化投資補助金も使えるし、長い目で見れば初期投資で回収できる。他社との差別化や若い人材の確保という意味でも大きい」と決断した。
人材面では、ICT建機には施工指令を出す3D設計データが必要で、専門人材が欠かせない。同社では聆さんの夫・斉藤大輔さん(37)がデータ作成を担う。元美容師でICT施工に関する知識はなかったが、パソコン操作に習熟しており、転職して兵庫県姫路市の建設会社で修業し専門知識を得た。
作業効率向上と安全面での効果
導入のメリットは大きく、同社では「丁張り」などの手間がなくなり、月平均で45~55時間の労働時間削減につながった。「土曜まで予定していた工期が金曜で終わり、休日が1日増えるイメージ」という。
街中の狭小な土地でのマンション建設などでは、建機の周囲に作業員を置かずに済むことが労働災害の減少に直結する。聆さんは「うちではないが、建機との接触で命を落とすこともある。その効果が一番大きいかもしれない」と話す。
ICT建機は、全地球測位システム(GPS)やセンサーなどの情報通信技術(ICT)と3次元(3D)の設計データを連動させる建設機械。掘削工事などを自動制御で行うため、比較的経験の浅いオペレーターでも操作できる。操縦席に3Dデータを映すモニターが設置されているのが特徴で、中小企業向けの補助金が使える機種もある。



