JR・京王・東武…日立と組む「鉄道AI」で何が変わるか 熟練者の知見をAIに
日立の鉄道AI「HMAX」が変える保守業務と未来

人工知能(AI)技術の進化に伴い、オフィス内での生成AI活用にとどまらず、センサーで外部環境を認識しインフラを自律制御する「フィジカルAI」が注目を集めている。その最前線にあるのが、日立製作所のAIソリューション「HMAX(エイチマックス)」だ。2024年9月の発表当時はまだフィジカルAIという言葉は一般的ではなかったが、HMAXは鉄道車両に複数のセンサーを取り付け、データを収集・分析して車両の状態をリアルタイムに診断し、保守や運行管理に役立てる、まさにフィジカルAIそのものの機能を備えている。

本稿では、HMAXを担当する日立の鉄道国際営業本部グローバル事業シナジー創出本部の安達尚郎本部長へのインタビューをもとに、2026年現在の最新動向を踏まえ、日立が描く「鉄道AI」の全容とその目指す未来像に迫る。

台車のベアリングにセンサー

日立は車両メーカーとして知られるが、海外では鉄道の保守や運行受託といった事業も幅広く手がけている。HMAXは、そうした海外保守拠点の現場発の課題解決から生まれた。従来、イギリスの現場では台車のベアリングの内部状態を確認することが難しく、安全のために2年おきに一斉交換していた。しかし、これではまだ使える部品まで廃棄することになり、コスト・労力ともに非効率だった。そこでセンサーと解析技術を用い、ベアリングの状態を常時モニタリングすることで、最適なタイミングでの交換が可能になった。安達本部長によると、ベアリングの使用期間は最大で4年まで延ばせるようになったという。

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振動の違いで異常の予兆を発見

HMAXは台車のベアリングだけでなく、車輪やモーターの異常も振動の違いを分析して予兆を発見できる。センサーは台車に取り付けられ、振動データを常時収集。AIが正常時と異常時のパターンを学習し、微妙な変化を検知する。これにより、故障が発生する前に交換や修理が可能となり、突発的な運行停止を防ぐことができる。

集大成は「コペンハーゲンメトロ」

HMAXの集大成ともいえるのが、デンマークのコペンハーゲンメトロへの導入だ。同メトロでは全線で無人運転を採用しており、HMAXによる遠隔監視・診断が安全性と効率性の向上に貢献している。安達本部長は「コペンハーゲンメトロは、HMAXの機能を最大限に活用できる環境。自動運転だけでは人的負荷は変わらないが、HMAXで保守の自動化を進めることで、トータルの人的負荷を減らせる」と語る。

高所作業を減らし安全性向上も

HMAXの導入により、従来は熟練作業員が行っていた高所作業や目視点検が減り、安全性が向上する。センサーが常時監視するため、点検のために車両を止める時間も短縮できる。また、収集したデータはAIが分析するため、熟練者の知見をAIに継承し、若手作業員でも高度な診断が可能になる。

自動運転だけでは人的負荷は変わらない

自動運転技術が進んでも、車両の保守には依然として人手が必要だ。HMAXは保守の自動化・効率化により、人的負荷を大幅に削減する。安達本部長は「自動運転で運転士がいらなくなっても、保守作業員の負荷は変わらない。HMAXはその部分を解決する」と強調する。

スケールメリットで価格は下がるか

HMAXの導入コストは、現時点ではまだ高額だが、導入台数が増えればスケールメリットが働き、価格は下がると見込まれる。日立はJR、京王、東武など国内鉄道会社との協業を進めており、ローカル線への導入も視野に入れている。安達本部長は「ローカル線は人手不足が深刻。HMAXのようなAI技術が、持続可能な鉄道運営に貢献できる」と述べている。

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