「AIに読まれないコンテンツは、AIにとって『存在しない』ことと同じ」―。インターネット上の投稿プラットフォーム「note」が開いたメディア向けの勉強会で、note社の加藤貞顕CEOが、AIの普及によって変わりつつある情報流通のあり方や、AI時代のコンテンツビジネスの課題を語った。
AIを遠ざければ、機会も失う
勉強会は7月21日に東京都内で開かれ、加藤CEOと、7月にCSO(最高戦略責任者)に就任した深津貴之氏が語り合った。インターネットを活用する企業やコンテンツ事業者はこれまで、検索エンジンで上位に表示されるために、SEO(検索エンジン最適化)に注力してきた。しかし生成AIが検索や情報収集の入り口になり、ユーザーは検索ではなくAIに答えを求める場面が増えてきた。
企業やコンテンツ事業者にとって「生成AIにどう紹介してもらえるかが課題になる」(深津氏)という。この変化は、コンテンツ事業者に難しい対応を迫っている。新聞社や出版社、イラストレーターなどの著作権者は、コンテンツがAIに学習されて模倣・改変されることを防ぐために、AIのクローラーを遮断することがある。すると、AIはそのコンテンツを「そもそも知らない、参照できない」(深津氏)状態になる。
利益還元と情報流通の両立
「コンテンツを守らなければいけないけれど、完全に守るとAIはアクセスできない。AIに紹介されなければ、(自社のサイトやコンテンツへの)流入も来ない」また、有料会員限定記事などの場合、AIに無料で読ませないために遮断することもある。しかし深津氏は、「AIに学習されないけれど、読んでもらうという設計をしなければいけない」とし、コンテンツの一部をAIに読ませるようなサイト設計を提唱した。
AIをめぐる懸念はほかにもある。AIが記事内容を要約して回答することで、ユーザーが出典元の記事を訪れない「ゼロクリック」が増えれば、コンテンツ事業者の閲覧数や収益機会の減少につながる可能性もある。こうした課題を踏まえ、noteは、経済産業省などが進める生成AI開発支援プロジェクト「GENIAC」で採択された取り組みを紹介した。noteが提案した事業では、コンテンツが適切なルールの下でAIに利用される仕組みを整備し、クリエイターへの適切な利益還元とAIによる情報流通の両立を目指すという。
小手先の対策は通用しにくくなる
AIに自社の情報を推薦してもらうための「LLMO(大規模言語モデル最適化)」も注目されている。AIから有利に評価されることを狙い、ウェブサイトにAI向けの指示を埋め込むなど、いわば「ハック」と呼べる手法も登場している。しかし深津氏は、こうした小手先の対策は中長期的には通用しにくくなるとの見方を示した。「AIに『このサイトは小手先でやっているだけだから紹介するのをやめよう』と思われてしまう」
AIに評価されることだけを目的に情報を最適化するのではなく、本質的なページの価値を高めることが重要だという。「検索でどう勝つか」だった時代から、「AIにどう理解され、なぜ推薦される存在になるか」の時代へ。AI時代の情報発信をめぐる競争は、変わりつつある。