ランサムウェア攻撃の被害に遭った企業が、セキュリティ企業と契約して対応を委託した。ところが被害企業を支援するはずだった交渉担当者は、密かに犯人側と結託して身代金の額をつり上げ、見返りを受け取っていた――米国でそんな事件が発生した。
その後の捜査でこの担当者は、同僚などサイバーセキュリティ対策のプロ数人と共謀して自らランサムウェアを犯し、別の企業から多額を脅し取っていたことも分かった。
元従業員に禁錮70カ月の判決
米司法省の発表によると、インシデント対応を手掛けるセキュリティ企業の従業員だったアンジェロ・マルティーノ被告(41)は7月9日(現地時間)、恐喝などの罪でフロリダ州の連邦裁判所で禁錮70カ月の判決を言い渡された。2023年にランサムウェア「BlackCat」の被害に遭った企業を支援する立場にありながら、信頼を裏切って犯人側と内通していたとされる。
調べによると、犯人との交渉役を務めたマルティーノ被告は、被害企業が支払う身代金の額を最小限に抑える役割を担っていた。ところが「交渉に関する秘密情報をサイバー犯罪組織に提供して金額を最大限に引き上げ、見返りとして支払われた身代金の一部を受け取っていた」(米司法省)という。
マルティーノ被告が担当していた被害企業5社が支払った身代金の総額は7500万ドル(120億円)以上。いずれも同被告が犯人側に秘密情報を提供した結果、不当につり上げられた金額の支払いに同意していた。
身代金要求額を200万ドル以上つり上げ
マルティーノ被告が秘密情報を漏らしたために、要求額が跳ね上がったケースもあった。例えば23年10月には、被害企業が提示額より200万ドル高い身代金を支払う用意があることを知り、犯人側に対して当初の提示額を拒むよう指示。結果として、被害企業は最初の提示額より200万ドル以上高い身代金を支払わされた。
被害に遭ったのは金融企業や医療関連企業で、サービスに支障をきたすなどして多大な損害を被った。
一方、マルティーノ被告は顧客からだまし取った金を、車やボート、住居などの購入に充てていたとされる。
捜査を主導した米連邦捜査局(FBI)や米シークレットサービスは、被害企業が送金したデジタル通貨の流れをたどり、マルティーノ被告が管理しているデジタル通貨のアドレスにたどり着いた。
セキュリティ企業経営者の3人がランサムウェア攻撃
マルティーノ被告は交渉役として被害企業をだましただけでなく、自らBlackCatのアフィリエイト(ランサムウェア攻撃の実行役)となり、米国内の複数企業に対する恐喝に関わっていた。23年4月から11月にかけ、経営先のセキュリティ企業の同僚らと共謀のうえ、ビットコインで120万ドル相当の身代金を脅し取っていたとされる。
この事件では、共謀者とされる元同僚のケビン・マーティン被告(36)と、別のセキュリティ企業従業員だったライアン・ゴールドバーグ被告(41)が、26年4月にそれぞれ禁錮4年を言い渡されている。
被害に遭ったのはエンジニアリングサービスや医療関連の企業で、被告らが診療所から患者の情報を流出させていたケースもあった。
3人とも起訴内容を認めており、検察側は「いずれもサイバーセキュリティ業界で働き、コンピュータシステムを守るための特別なスキルと経験を持っていた」とした上で「サイバーセキュリティに関する専門知識を、被害者を守るためではなく、恐喝するために利用した」と非難している。



