香川のことでんに新型車両2000形納車、98年ぶりの完全新製車
香川のことでんに新型2000形、98年ぶり完全新製車

香川県の高松琴平電気鉄道(愛称:ことでん)に、新型車両「2000形」が納車された。1両あたり全長18メートルで、乗降扉は片側3カ所に設置。製造元の総合車両製作所が「sustina S13」シリーズとして展開する車両で、オールステンレス製の軽量化車体を採用。運転台付近のみ鋼製とし、運転士保護を考慮した仕様となっている。この構造は踏切の多い路線を中心に採用されている。

デザインコンセプトは「うみ・まち・さと」

デザインコンセプトは「うみ・まち・さと 地域をつなぐ、ことでんの新しい顔」。外観デザインは3案のうち、投票で「フレッシュ(香川の新しい風)」が選ばれた。青色を基調とした前面に白い弓状のアクセントを配したデザインは3案とも共通していたが、側面については意見が分かれた。採用された案は、青色・白色を基調としつつ、屋根に水色、ドア下に黄色をあしらい、最も色使いの多いデザインだった。特に黄色を評価する声が多かったという。美しさだけでなく、乗降時に注意を引く役目もあり、実用的な車両に仕上がった。

車内も「sustina S13」シリーズをベースに、清潔感のある明るい色使いになった。ドア横に設置した座席仕切り壁のデザインは、ことでんのマスコットキャラクター「ことちゃん」を連想させる。仕切り壁の中央から手すりが出ており、一度通路側に張り出して仕切り壁を延長する役割を持たせると同時に、上から手をしっかり握れる仕様とした。縦の手すりだと体重をかけたときに手が滑りやすいため、横方向の手すりは良い配慮である。吊り手の高さを座席付近と通路上、ドア付近で変えるなどの細かな配慮もある。

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98年ぶりの完全新製車

ことでんの既存車両はレトロな雰囲気で、「中古車博物館」とも呼ばれ、鉄道ファンを中心に人気を集めている。しかし沿線利用者にとっては新しい電車のほうがうれしいだろう。同社の新車は66年ぶりと報じられている。66年前の新車とは、1960年(昭和35年)に製造された1010形。前面2枚窓の「湘南顔」で、セミクロスシートを採用し、急行用として登場した。後年は貫通顔のロングシートに改造され、2003年に廃車となった。ただし、この車両は車体のみ新造で、動力部などは中古品を組み合わせていた。

すべての部品を新造した車両となると、1928年(昭和3年)に製造された5000形以来となる。この車両から数えた場合、ことでんの完全新製車は実に98年ぶり。あと2年で100年ぶりとなる。既存車両の大半が中古車で、車両の引退時期を見極める必要があり、補助金の予算の都合もある。

新車導入の背景と費用

ことでんの新車導入は、2002年から着手した経営再建計画「ことでん100(イチマルマル)計画」の取り組みの結果であり、2026年6月に国土交通大臣から認定された鉄道事業再構築計画のひとつとして実施される。設計費用は2億円、車両製造費用は1両あたり5億円。まず4両を調達する予定で、総額は22億円とされた。車両製造費の総額は42億円と説明されていることから、将来的には8両程度の導入になる可能性がある。

香川県の令和7年度予算資料によると、車両更新の経費負担割合は、事業者が10分の1(10%)、国が20分の9(45%)、香川県が40分の9(22.5%)、沿線市町が40分の9(22.5%)となっている。つまり、事業費の1割をことでんが負担し、残りの半分を国、さらに半分を県、残りを市町村で分担する。

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引退する1070形

2000形と交替で引退する車両は1070形。京急電鉄の初代700形として1957~1958年に製造された電車で、高松琴平電気鉄道が1984~1987年にかけて2両編成3本を導入した。移籍にあたり、運転室周りの「湘南顔」を貫通路付きに、クロスシートをロングシートに変更。制御機やブレーキなども改造している。高松琴平電気鉄道にとって初の冷房付き車両だった。

1070形は製造から69年、高松琴平電気鉄道へ移籍してから42年経っている。2011年に2両が廃車となり、現在は2両編成2本が残る。定期運用を行う中では最古参の車両である。現在は朝夕ラッシュ時や他の車両の検査時など、車両が不足したときの「助っ人」的な役割で運用される。2025年には、2両が導入当時のファンタンゴレッド塗装に復刻された。引退を前提とした最後の全般検査で行われたため、ことでんが「引退の花道を作った」ともいえる。

公式サイトによると、1070形は2両編成単独で運行できないため、貸切列車として使用する場合は他形式2両を連結した4両編成になるという。老朽化により、万が一でも単独で走行不可能になるような事態を避けている。利用者の意見に対する回答として、「お客様により安全かつ快適にご利用いただけるよう単独での運用を制限しております」とあった。1070形の引退時期は未定とのこと。

車両の変遷から見える転機

1070形が登場した1984年以降の車両動向を調べると、興味深い結果になった。1998年頃から2006年にかけて、新旧の車両構成が大きく入れ替わっていた。この入れ替わりは、主に「1998年から2000年まで」「2001年から2003年まで」「2004年以降」の3段階に分かれる。1998年まで、自社発注以外に8社21形式の中古車が集まり、まさに「中古車博物館」だった。現在は名古屋市交通局と京急電鉄の2社局、合計7形式にまとまり、名古屋市と京急沿線の人々にとって懐かしい車両が見られる鉄道会社になった。

1998~2000年は名古屋市交通局から中古車を大量に導入した。高松琴平電気鉄道としては、以前から古い車両を更新したかったが、当時の長尾線と志度線は全長18メートル規格未満の車両が走れなかった。大手私鉄を中心に多くの事業者が車両を大型化したため、15メートル級の中古車が出なかった。かといって、新車を導入する予算もない。なんとか古い車両を使い回していたところに、名古屋市営地下鉄東山線・名城線で車両更新に伴う廃車が出た。そこで第三軌条方式から架線集電式に変更するなどの改造を行い、3年間で合計24両を導入した。

2001~2003年は京急電鉄から700形を購入し、1200形に変更して8両を導入した。代わりに4形式を廃車し、車両統一を進めた。そしてこの時期、高松琴平電気鉄道にとって重要な転機が訪れる。「ことでん、いるか、いらないか」騒動である。

高松琴平電気鉄道は1994年に瓦町駅改良計画を着工し、1997年に完成した。駅ビル内に百貨店「コトデンそごう」を開店したが、すでにバブル経済の下降期にあり、経営は思わしくなかった。2000年に提携先のそごうグループが経営破綻し、その余波で「コトデンそごう」も民事再生を申請して閉店。百貨店の民事再生は銀行や取引先の返済を留保するため、地元の企業に迷惑をかけた。さらに、「コトデンそごう」に債務保証していた高松琴平電気鉄道も経営難となり、民事再生の適用を申請した。

しかし、この民事再生に対する沿線の人々の反応は冷ややかだった。当時の高松琴平電気鉄道は、市民の評判が良くなかったといわれている。冷房付き車両の導入が遅れ、車両は古いものばかり。施設の不満だけでなく、職員の接客態度についても厳しい意見が寄せられたという。経営再建に向けたアンケートで、「鉄道は必要だけど、琴電はいらない」との声もあった。

2002年、香川県は高松琴平電気鉄道に対し、「サービスの改善」と「経営体制の一新」を条件に、2005年度まで総額5億円を上限として、沿線市町とともに設備投資を支援すると表明。新経営陣は「四国一の電鉄会社にする」を目標に掲げ、「高松琴平電気鉄道100計画」と名付けた経営再建計画を策定した。

サービス面の見直しの一環で、イルカの「ことちゃん」をシンボルキャラクターとしたほか、「イルカボックス」という投書箱も設けた。「ことでん、いるか、いらないか」という問いかけから生まれたキャラクター「ことちゃん」の躍進はここから始まる。

2004年以降、本格的に再生開始。長尾線の大型車対応工事が終わると、1200形の増備が続けられた。2008年以降、旧名古屋市営地下鉄・旧京急電鉄の車両が主力となった。利用者の不満点だった冷房化率も上がった。旧型車は淘汰されたが、大正時代に製造された4両が残り、「レトロ電車」としてことでん名物になった。全国の鉄道ファンが「レトロ電車に乗ろう、見よう」と集まったが、現在は4両とも定期運用を終了している。

今後の展望

2000形の登場は、「中古車博物館」とも呼ばれたことでんに新時代が訪れたことを示す。かつて沿線に「いるか、いらないか」と問いかけた鉄道にとって、新型車両はイメージアップの総仕上げとなる。まずは4両を導入するとのことで、これは1070形の車両数と一致している。ことでんは琴平線の複線区間延長も進めているが、新駅の開業とダイヤの遅延解消が目的とのことで、増発予定はないと報じられた。1980年代以降、車両数は80両前後のままとなっており、今後も新車導入と同数の廃車を進めるのではないかと予想する。

2000形の2次車以降が導入されるとすれば、次の廃車は1080形(元京急電鉄の初代1000形)か1100形(元京王帝都電鉄の初代5000系)かもしれない。どちらも高度経済成長期に製造された私鉄の名車だが、京急1000形は製造から66年、京王5000系は製造から63年が経過している。

続いて元名古屋市営地下鉄の600形・700形になるところだろう。これらの車両も製造から60年前後が経過している。ところが、600形・700形が活躍する志度線は現在も15メートル級の小型車規格である。再び名古屋市営地下鉄からの中古車譲渡になるか、あるいは新車導入になるか。志度線の車両動向もあわせて注目していきたい。