GMOインターネットのクラウドサービスが不正アクセスを受けた問題で、FX(外国為替証拠金)取引を行う個人投資家らが、将来の蓄えや子どもの教育費などを目的に運用していた資産の一部を一夜にして失った。個人情報が公開されるリスクもあり、不安を募らせている。
一瞬で119万円消失、頭真っ白
「これ、現実なの?」 大阪府の会社員女性(37)は22日朝、スマートフォンで自身のFX口座を見て頭が真っ白になった。前日には約300万円あった残高が、約120万円に減っていた。
取引履歴を見ると、22日午前0時40分、南アフリカの通貨「ランド」を売ってユーロを買う操作が行われ、わずか一度の取引で119万円の損失が出ていた。自分が普段行っている取引とは桁違いで、全く身に覚えがなく、不正アクセスの被害に遭ったとすぐに確信した。
FX取引は、将来に備えて10年ほど前に始めた。GMOインターネットが提供するFX自動売買専用サービス「お名前ドットコム デスクトップクラウド」を使うようになったのは数年前。「名前が知られた大手で、安心感があった」
だが、コツコツと増やしてきた資金は一瞬で半分以下に減った。資産が減った場合に自動で決済される取引なども含めると、損失額は計178万円に上る。
補償方針も「問い合わせに返信ない」
同社は24日、利用者が被った損害について補償する方針を発表したが、「問い合わせに対して何も返信がない」と不信感を募らせる。「私のような一般の利用者が安心して使えるよう、国や事業者は今回の問題に誠実に向き合って対応してほしい」と訴えた。
埼玉県草加市の会社員男性(32)は24日未明、<【通告】顧客データを公開します>というメールを受け取り「自分にも来たか……」と不安を募らせた。男性も22日未明に不正取引されて約55万円を失っていた。
メールは日本語で「不正アクセスしたハッキングチーム」を名乗り、「GMO側に対し、返答がない場合は明日、顧客データを公開すると通告しました。このデータには、皆様の個人情報が含まれています」などと書かれていた。不正に取得したとするデータの一部も「証拠」として添付されていた。
FX取引は十数年前に始め、8年前から「お名前ドットコム」を利用している。4歳と1歳の子ども2人の教育費にも充てたいと考え、1000万円ほどまで資産を増やしたところで、思わぬ被害に遭った。
個人情報の漏えいなどが相次いでいることを受けて、指紋や顔で認証する「パスキー」を設定するなどの対策は進めていたという。男性は「被害が個人の資産にまで及ぶようになり、ついにここまで来たかという感覚だ。個人でできる対策には限界がある」と話す。
犯行声明とサイト公開、専門家は「極めて異例」
今回の攻撃を巡っては、攻撃を行ったと主張するハッカー集団が、日本語のサイトを公開し、攻撃の経緯やGMO側への要求などを掲載している。
サイトによると、同集団はGMOに「顧客の口座を破壊する」との予告メールを送ったが、「返事は一度も来なかった」と主張。一部の口座の資金を消滅させたとしている。
セキュリティー会社「三井物産セキュアディレクション」(東京)の福田美香氏は、「顧客に損害を与え、さらに犯行声明も送り付けて不安をあおり、企業に対応を迫るよう圧力をかけるのは、極めて異例だ」と指摘する。
GMOは、顧客から問い合わせを受けて19日に調査を開始したとしている。セキュリティー会社「S&J」(東京)の三輪信雄社長らは、サイトの記述から、5日以上前から不正アクセスされて何らかの情報の窃取が行われていた可能性を指摘する。
福田氏は「ハッカー集団のものとされるサイトにアクセスすると、端末のIPアドレス(ネット上の住所)などが設置者側に取得される可能性があり、閲覧は控えるべきだ」と呼びかけている。