不正アクセスで証券・FX取引に影響、岩井コスモとGMOで被害判明
不正アクセスで証券・FX取引に影響、岩井コスモとGMOで被害判明

一連の不正アクセスに続き、PHPの深刻な脆弱性が明らかになり、企業はセキュリティ対応に追われている。そうした中、金融サービスを巡るサイバー攻撃の影響が、個人情報の漏洩にとどまらず、金融取引そのものに及ぶ事例が相次いでいる。

岩井コスモ証券では、外部委託先のシステムへの不正アクセスに関連して、顧客が意図しない売買注文が発生した。一方、GMOインターネットのクラウドサービスでは、不正アクセスによってFX取引に利用する認証情報が第三者に閲覧された可能性が浮上した。両社の発表から、被害の状況と攻撃経路を整理する。

岩井コスモ証券、7口座で不正注文、5口座で約定

岩井コスモ証券は10月20日、インターネット取引システムへの不正アクセスに関する調査結果を発表した。10月14日に売買管理システムが攻撃を受け、7口座で顧客が意図しない売買注文が発注され、うち5口座で実際に取引が成立する「約定」が発生したという。

同社は対象となった顧客に同日中に連絡し、取引前の状態に戻す措置を完了した。顧客に金銭的な負担は生じていないと説明している。

今回の攻撃では、インターネット取引システムの運用・保守を委託しているトレードワークスのシステムが不正アクセスを受けた。調査の結果、4,975人分の氏名やメールアドレスなどの個人情報が漏洩したことも判明した。

ただし、漏洩した情報に取引暗証番号は含まれておらず、今回の不正取引も漏洩した個人情報を利用したものではないという。

同社は10月21日、攻撃者がAIを悪用してシステムの脆弱性を突き、総当たり攻撃を仕掛けたと追って説明した。また、パスキー認証が突破されたものではないことも明らかにしている。

同社は不正アクセスの原因となった箇所の修正を完了しており、トレードワークスと連携してアクセス制限や不正通信の遮断、監視体制の強化などを実施した。インターネット取引システムは通常どおり稼働している。

GMOのクラウドサービスに不正アクセス、FX口座の認証情報にも影響か

GMOインターネットは10月21日、同社が提供する「お名前.com デスクトップクラウド」で第三者による不正アクセスが発生したと発表した。一部の顧客のサーバー環境に、不正なプログラムが設置されたことを確認している。

同サービスは、クラウド上のWindows環境を利用できるサービスで、FXの自動売買プログラムなどを継続的に稼働させる用途にも利用されている。

今回の不正アクセスを受け、OANDA証券は10月22日、同サービスを利用してFX取引プラットフォーム「MetaTrader 4(MT4)」「MetaTrader 5(MT5)」を稼働させていた顧客について、取引口座のログインIDやパスワードが第三者に閲覧された可能性があると注意喚起した。

同社は対象となる利用者に対し、マイページやMT4/MT5のパスワード変更、二段階認証の利用、取引履歴の確認などを求めている。不審な取引が見つかった場合には、サポート窓口に連絡するよう呼びかけた。

さらにOANDA証券は10月22日、外部サービスへの不正アクセスを受けたセキュリティ強化と緊急確認のため、出金依頼の確認・処理を一時的に保留すると発表した。不正な出金を未然に防ぐための予防措置としている。

GMOインターネットのサービスへの不正アクセスによって、FX取引に必要な認証情報が外部に漏れた可能性があり、金融機関側でも顧客保護のための対応が必要になった格好だ。

金融サービスを支える外部システム、攻撃の影響は取引にも

今回の2つの事例では、攻撃の対象や手法は異なるものの、金融サービスを支える外部システムやクラウドサービスへの不正アクセスが、金融取引に影響を及ぼす可能性が示された。

岩井コスモ証券では、システムの脆弱性を突いた攻撃によって、顧客が意図しない売買注文が実際に発注された。一方、GMOインターネットの事例では、クラウド環境に保存されていた可能性のある認証情報を通じ、FX取引口座への不正ログインなどが懸念されている。

特に岩井コスモ証券の事例は、パスキーや多要素認証を導入していても、取引システム側の脆弱性を悪用されれば、不正な注文が発生し得ることを示している。

また、GMOインターネットの事例からは、金融機関が直接管理していないクラウドサービスの安全性も、利用者の金融資産を保護するうえで重要になることがわかる。

金融サービスのセキュリティ対策では、利用者の認証強化に加え、外部委託先のシステムやクラウド環境を含めた対策が改めて問われている。