建設業の3Kを変える、佐世保の舗装会社がkintoneで177アプリを内製化
建設業の3K変える、佐世保の舗装会社がkintoneで177アプリ内製化

長崎県佐世保市の舗装工事会社・西部道路が、サイボウズの業務改善プラットフォーム「kintone」を活用し、建設業の「3K」(きつい・汚い・危険)を新しい「3K」(休暇が取れる・給料がいい・希望が持てる)へ転換する取り組みを進めている。導入から約1年で177個のアプリを内製化し、決裁スピードを5日間短縮するなどの成果を上げた。

Excelと紙の二重管理に苦しむ現場

西部道路は創業78年、長崎県佐世保市を拠点に4支店6営業所を展開する建設業者。舗装工事を主軸に、一般土木工事や管工事、アスファルト廃材の受け入れからリサイクル材料の製造販売までをグループ内で一元化している。

建設業のプロセスは入札→開札→落札→受注・契約→現場管理と流れる。契約後の現場管理を担当する工事部所長の村野三喜男氏は、案件情報をすべて手入力でExcelにまとめる必要があり、工事を受注するたびに転記作業が発生。月に2回、各拠点のExcelファイルが本社に集約される運用が続いていた。

一方、バックオフィス担当の中嶋加奈子氏は紙の管理に追われていた。手書きの申請書も多く、受注契約から注文書作成、役所・下請け業者との変更契約、請求書作成に至るまで、同じ情報を何度も入力し、コピー&ペーストを繰り返す。完成した書類は種類別に印刷・ファイリングして保管するため、「書類を作成するよりも探す時間の方が長かった」と振り返る。

きっかけは「レアキャラ」専務、内緒で作ったアプリ

転機は約3年前、大手銀行出身の専務の入社だ。多忙でなかなか見かけないことから、一部の社員には「レアポケモン」と呼ばれていたという。この専務の主導で約2年前、kintoneのライトプランを導入。同年12月には全支店・営業所で従業員説明会が行われた。

当初、社員はkintoneを休暇申請に使うだけの「ユーザー」だったが、伴走担当者から「自分たちでアプリを作れますよ」と教えられたことが転機となった。村野氏と中嶋氏は業務効率化を目的としたアプリを遊び感覚で作り始め、それが専務の目に留まったことで、7月には組織横断型の「道しるべプロジェクト」が発足した。コンセプトは「低コスト・内製化」だった。

低コストにこだわった村野氏は、ライトプランではプラグインが使えないという壁に直面。サイボウズから開発ライセンス環境の紹介を受け、プランを1年間無料で使える環境を約3カ月にわたって並行運用した。開発環境で作ったアプリを社内でプレゼンする中でプラグインの重要性を実感し、正式にスタンダードプランへの契約変更を勝ち取った。

その後、村野氏と中嶋氏を中心にアプリ開発が加速し、約半年で177個のアプリを開発した。一方で、社内では「kintoneって何?」「今のままでも困っていない」「新しいことは面倒」といった声も少なくなかったという。中嶋氏は「社内との温度差も右肩上がりだった」と振り返り、村野氏も「人に伝えるのは難しい」と浸透に苦労したことを明かした。

「使わないと業務が進まない」仕組みづくり

従業員への浸透に向け、2人はYouTubeなどで情報収集しながら独学でアプリ開発のスキルを磨いた。使いやすさを重視し、スマートフォンに近い操作画面や、従来のExcelに慣れた社員でも戸惑わない仕組みを取り入れた。

まず、スマートフォンのように直感的に操作できるポータル画面を作成し、一覧画面や新規作成画面へワンクリックで移動できるショートカットを配置。縦長になりがちなレコードを操作しやすくするため、無料の「目次プラグイン」も活用した。

社員に使ってもらうための入口として選んだのが、全員に関係する休暇申請だった。従来は紙ベースで、申請用紙は事務所にしかなく、記入後は上司に直接承認を求める必要があった。中嶋氏が「スタンプラリー」と表現する手続きをアプリ化し、必要な情報を自動取得してワンクリックで申請できるようにした。これにより、場所を問わず休暇を申請できるようになり、新しい3Kの一つ「休暇が取れる」の実現につながった。

続いて村野氏は工事台帳のアプリ化に取り組んだ。「使用しないと業務が進まないシステムを作る」という狙いがある。従来は営業所と本社でExcelの様式が異なり、転記ミスの温床になっていたが、本社側のUIに寄せて工事台帳をアプリ化し、担当者が自分の案件情報だけをレコードとして追加する方式に統一した。メールやFAXもほぼ廃止し、連絡はメンション機能でのコメントに置き換えた。現場の図面データもアプリ内に格納し、どこにいても検索・確認できるようにした。

工事台帳を軸に、予実管理アプリも内製。工事情報は工事台帳からルックアップする仕組みにして転記を不要にし、色付きセルのみを入力すれば工種ごとの原価管理や集計を自動化できるようにした。プロセス管理には、同じ九州の企業であるKAIZEN社のプリントプラグインを活用し、ボタン一つでPDFをレコードに格納できるようにした。

決裁スピード5日短縮、現場からの改善提案も

工事台帳がデータベース化されたことで、バックオフィスにも変化が生まれた。必要な情報が工事台帳に集約され、書類を探す手間がなくなり、書類棚は目に見えてスカスカになった。注文書も工事台帳の情報を自動反映してPDF出力できる仕組みを整えた。

その結果、決裁スピードは5日間短縮。数日〜1週間を要していた承認が最短当日・遅くとも翌日になった。工事台帳のクラウド化で現場完結型の働き方が実現し、転記作業はゼロに。事務作業時間の大幅な短縮とペーパーレス化を達成した。

さらには、現場から「ここをこうしてほしい」「こんなアプリを作ってほしい」という自発的な改善提案が上がるようになった。「ミスが減り、心にも時間にも余裕が生まれた。社内で情報が会社の資産として共有される文化が定着した」と中嶋氏は成果を語る。

今後の展望について、村野氏は工事台帳を中心に注文書アプリや予実管理アプリへと派生させてきた仕組みが、建設業に限らず他業種でも基幹となるアプリを作ることで同様の展開が可能だとの見方を示した。「それを可能にするのがkintone」(村野氏)

今後はリアルタイムな利益管理を目指すという。収益の可視化、日報の進化を通じて赤字の原因を可視化し、現場単位での採算意識を向上し、経営層の迅速な意思決定をサポートしたいと述べた。また、AIなどの補助も活用しながら若手社員を後押しできる環境づくりを目指すとした。

最後に村野氏と中嶋氏は、「ITの専門家がいなくても、自分たちの手でDXは進められる」と語り、「好きじゃないとできない。好きを大事にしてください」と会場にメッセージを送った。