ニトリHD、社内用語がAI分析の壁に「力技」で解決 データ分析基盤構築の裏側
ニトリHD、AI分析の壁を力技で解決 データ基盤構築の裏側

家具・インテリア大手のニトリホールディングス(以下、ニトリHD)が、データ分析基盤の構築とAIを活用した分析機能の実装に至った経緯を、「Google Cloud Next Tokyo」(7月30〜31日開催)の講演セッションで明らかにした。同社は「製造物流IT小売業」と自らを定義し、ITやデータの活用に注力。5カ年計画でデータ分析基盤を整備してきた。現在は分析用の主要なテーブル(データを収めた表)だけで2600本を超えるという。

「何が売れたか」から「なぜ売れたか」へ

ニトリHDがデータ分析基盤の検討を始めたのは2021年。自社内で運用してきたデータ分析基盤をクラウドサービスの「Google Cloud」へ移行し、米Googleが提供するデータ分析基盤「BigQuery」にデータを集約してきた。BigQueryを使うことで、顧客の行動データや、オンラインとオフラインの顧客接点の関連性など、これまで分析したくてもできなかったデータを取り込む狙いがある。これらのデータを1つの基盤で扱えれば、分析の精度も作業効率も向上させられる。

狙いは効率化にとどまらない。データから導いたインサイトを生かして「在庫過剰」のような無駄をなくし、適切な量を作って運ぶことで、CO2排出量を削減できる。さらに同社が目指すのは「なぜ」の把握だ。「何が売れているか」はデータを見ればすぐに分かるが、「なぜその数字が出たのか」は購入履歴や購入プロセスを分析しなければ見えてこない。「なぜ」を知るために新たなデータ分析基盤が必要だった。

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コストと「認知の限界」という壁

BigQueryを使ったデータ分析基盤は、2022年後半に稼働を開始した。並行して全社的な教育制度も整備。オンプレミス環境からの移行によって容量制限と管理の手間がなくなり、使い勝手がよくなったことから分析用の主要なテーブルだけで2600本を超えた。システム部門以外にも分析環境を開放できた。

一方で問題も残った。一つはコストだ。BigQueryの料金体系は、処理量に応じた従量課金モデル。ニトリHDは、移行した既存のBIツールが無駄に余計な問い合わせを繰り返し、費用を押し上げていた。もう一つが「認知の限界」だ。同社の小柳氏は「データ分析ができる環境を提供できても、使いこなせるかどうかは別問題」と述べ、使いこなせる人だけが恩恵を受ける構造を助長してしまっていると指摘した。

コストと認知の問題をどう解決するのか。同社は、1つのBIツールが性質の異なる2つの用途――「定型のデータ表を見るだけの用途」と「レポートを作る用途」で使われている点に着目した。後者の用途は、作成用ライセンスが高額のため各店舗の全社員に配ることが難しい上、操作スキルやデータベースを操作する言語「SQL」を理解するハードルも高かった。

「黒毛和牛の寝具の売上高を出して」でデータが出てくるように

そこでニトリは、BIツールを「参照機能」と「探索機能」に分離した。参照機能は、AIのコードアシストで必要な機能だけを閉じ込めて内製することにした。その結果「BIツール製品で調整しながら表を作り上げるのと、ほぼ差がないくらいのローンチはできている」(小柳氏)という。

システム部門以外もデータを分析できるように、AIを活用して「対話型分析」機能を実装。「商品XXXXの販売数量実績を前年比で出して」と投げかけるだけで、データやグラフを出力できるまでになった。「黒毛和牛の寝具の売上高を出して」といった社内用語にも対応し、データ分析の壁を「力技」で解決したという。

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