教皇フランシスコ、AI巡る警鐘と労働への影響に回勅「MAGNIFICA HUMANITAS」
教皇、AI警鐘の回勅「MAGNIFICA HUMANITAS」

教皇フランシスコは5月25日(現地時間)、AI時代における人間の尊厳をどのように守るべきかについての自らのビジョンを、回勅(Encyclical Letter)「MAGNIFICA HUMANITAS」として発表した。回勅とは、教皇が全世界に向けて発布する最高レベルの公文書であり、教義の解説書にとどまらず、各時代の「新しい事柄」に直面した際、現代の社会構造や人々の生活に対してどのように福音の視点を適用すべきかを示す「生きた真理の体系」としての役割を担う。

回勅の主な内容

今回の回勅は、AIの普及が社会にもたらす課題について多角的に分析している。主な内容は以下の3点だ。

AIを活用した戦争の危険性

アルゴリズムによる判断が武力のハードルを下げるとして強く警鐘を鳴らし、命の選別を自動化システムに委ねてはならないと強調している。

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AIが労働に及ぼす影響

効率化や利益の追求によって労働者が単なるコスト削減の対象とされかねないと問題視し、雇用の保護と労働の尊厳を守るよう求めている。

新たな法的・倫理的枠組みの必要性

少数の巨大企業にデータと権力が集中する現状を批判し、技術を統制し共通善に向かうための透明性と責任を伴う枠組みの整備を強く訴えている。

教皇はテクノロジーの進化そのものを否定しているわけではない。AI導入における慎重さ、厳密な評価、時にはペースを落とすことを求めることは、決して進歩への反対ではなく、「人類に対する責任ある配慮の実践」であると明確に位置づけている。回勅の中では、AIの性質について以下のような指針がなされている。

  • AIは決して道徳的に中立ではない。設計者の選択や優先順位を反映するものであり、一部の命を価値の低いものとして扱うなら、それは人間の尊厳と矛盾している。
  • AIを地政学的、商業的な支配のための競争から解放し、議論に開かれた人間に優しいものにしなければならない。
  • AIに致命的または不可逆的な決定を委ねることは許されず、常に自己認識と責任を持つ人間の管理下に置かれなければならない。

Anthropic共同創業者も同席

回勅発表の場には、米Anthropicの共同創業者、クリス・オラー氏も同席し、コメントを発表した。オラー氏は「最先端のAI開発機関は、商業的な競争や地政学的な圧力といったインセンティブの中で動いている」と業界の現状を率直に認め、技術を正しい方向に導くためには外部からの批判的かつ倫理的な視点が不可欠であると強調した。さらに「AIが提起する問題はコンピュータ科学の枠を超えており、人文科学や宗教、社会全体による対話が必要だ」と述べ、教皇や教会が技術に対する倫理的指針の提示に取り組む姿勢を歓迎した。

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