建設やものづくりの現場では、ベテランや先輩社員からの引き継ぎや現場指示が重要だが、うまく進まない事例も多い。こうした課題に応え、スマホやタブレットを用い、あえて静止画と「声で聞く」ことに絞ったサービスが実用化に向けて動き始めている。上司などの伴走者がその場にいなくても、伴走者の声で説明を聞きながら、位置情報と連動して正確な作業ができる仕組みだ。
「音声」に集中で作業効率アップ
新たなサービスの普及に奮闘するのは、LOOVIC(東京)の山中亨社長(50)。自社のサービスの解像度を高めたいとの思いで、埼玉県のイノベーション共創施設「渋沢MIX」が設定したスタートアップ創出・成長プログラム「S4」のシード期編に昨年度、参加した。「行政主導のプログラムということで資本関係のない中立的なマッチングが期待でき、県内での事業基盤構築の足掛かりになると期待した」と参加したきっかけを語る。
同社が事業の本格化を図ろうとしているのは、声でその場の知恵を伝えるナビガイド「TASK+al(タスカル)」。ベテランや先輩社員など伴走者が建設現場やものづくりの現場で付き添えなくても、録音された音声があたかも現場で付き添って説明しているように手順などを説明する。伴走側は全体説明として長めに録音しても、自動的に1回あたり15秒程度と短く編集し、受け手側は1つの工程を終えるたびに次の工程指示を聞く仕組みにすることで、一歩一歩着実に作業を進めることができるよう工夫した。
特許を取得、位置情報に肉声をひもづけ
人材不足が加速する中、伴走側は現場に同席しなくてもよく、指示を受ける側もスマホなどでの音声を頼りに手も目も自由になり、必要があれば画像を確認したりしつつ、双方の指導における関係を和らげてくれるなどの利点もあるという。さらに、位置情報に肉声をひもづけて現場で再現する仕組みにもなっており、特許を取得。特許関連では、「15秒以内の短い音声を静止画にひもづけて作業指示として提供する技術も『新規性・進歩性あり』と判定されている」という。
現状、次の開発課題として「AIを用いて双方向のやり取りができるよう、開発のブラッシュアップを必要とされており、これが適用されることでさらに利用用途が広がる」と意気込む。また、経営面では会社として自身の右腕となる技術系メンバーの採用が必要と話す。そうした課題を乗り越え、「県内での売り上げ創出や地域のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進、人手不足解消への貢献などを図りたい」と中長期の目標を語る。
人命にかかわる領域にも適用目指す
同サービスのターゲットは現在、製造業や訪問介護を中心としているが、将来的には「人命にかかわる領域などにも適用できるようにし、社会になくてはならない技術を目指す」と力が入る。今後、人工知能(AI)でロボットを自律的に動かすフィジカルAIの普及が見込まれるが、「人の判断を基に作り上げる当社の技術は一層重要性を増してくる」とし、「特許性が高いために海外展開しやすく、サービスの分かりやすさが向上した段階でグローバルなアプリケーションとして普及させたい」と意欲を示す。
同社は、今年度、渋沢MIXの「S4」プログラムの次のステップであるアーリー期編に参加し、事業のさらなる深化を目指す。



