2019年に企業の活動を社内外に伝えるオウンドメディアとして設立された『トヨタイムズ』は、企業スポーツの応援から新規事業の現場、社長・会長への直撃インタビューまで、タブーなしのコンテンツを創出してきた。公式YouTubeのチャンネル登録者数は2チャンネルで約150万人(トヨタイムズ93.2万人、トヨタイムズスポーツ46.7万人、9月12日現在)に達する人気媒体に成長。立ち上げから8年、このメディアを牽引してきたのが、元キー局アナウンサーの富川悠太氏と森田京之介氏だ。2人に、オウンドメディアの現在地について聞いた。
広報の定義の違い
富川氏は「僕は、ニュースとビジネスを担当しているので、その話になるんですけど、『広報』をしてるつもりは一切ありません。僕はメディア出身者として、ジャーナリストとして取材して、もしトヨタにマイナスであることがあっても伝えます」と語る。豊田章男会長も「好きにやっていい。それがリアルだから」と理解しているといい、「視聴者が、国民が、消費者が、皆さんが知りたいと思っていることを僕が代弁して聞いてるだけ」と説明する。
一方、広報部に所属する森田氏は「企業が発信する情報を、広報がリリースとかいろいろな形にしてメディアに出して、メディアを通じて世の中に伝えるっていう流れがずっとあった」と振り返る。SNSの普及で垣根がなくなった今、「より深く知ってもらう、深く届けるために、企業広報と、オウンドメディアがうまく密接に絡み合っていくっていう形が大事なんじゃないか」と考える。
内部から取材する価値
テレビで取材してきた立場から、富川氏は「企業の取材ってどこまで独占で取材させていただいて、どこまで見られるか。機密情報まで見られないじゃないですか。本当の意味での深掘りはできていない」と振り返る。トヨタの内部から取材することで「どんどん深く、真相まで取材できるっていうのは、今までと全然違いますし、僕としてはものすごい楽しいし、面白い」と語る。
森田氏も「(全部を取材して)その上で外に出せることを判断するのと、取材対象に線を決められてだと(全部を)知らずにというのだと、伝えられることの精度はだいぶ変わりますね」と指摘。富川氏は「(トヨタイムズは)ほとんど隠さないで出してます(笑)」と明かし、森田氏も「結果そうなんですよ。我々のやってることはすごく意味があるんじゃないかと思います」と応じた。
再生数の捉え方
YouTubeの再生数の捉え方について、森田氏は「メディアにいた時に思っていたことですが、視聴率やどれだけ見てもらえるかにこだわると、取材対象はメジャーなもの、みんなが知ってるものになっていく。マイナースポーツ、パラスポーツに光当てることを『やらない』という選択になっちゃう」と指摘。「メジャースポーツで100万回再生とるよりも、パラスポーツで1万回再生してもらって100個いいねもらえた方が、100人に届いたことの方が価値がある」と語る。
富川氏も「編集の仕方も全然違って。テレビだと視聴者、視聴率って考えるので、ラインアップももちろん違います。インパクトのあるものから行ったり、コメントもできるだけ短く短くする」と説明。一方でオウンドメディアでは「頑張ってるみんなに光を当てたいって考えると、それぞれのコメントをちゃんと取る。テレビみたいに見やすいようにとか、インパクトを与えるようにっていう編集をしないでも視聴回数はついてくるんだなって、逆に実感しています」と語る。
メディアの現状と今後の課題
ネットメディアの現状について、森田氏は「テレビの世界、新聞の世界がもともとはちゃんとした姿勢でやってた部分が、ネットメディアという、同じ事象をよりセンセーショナルに伝えるライバルが現れたことに、引っ張られた」と分析。「同じものを出しても、よりセンセーショナルに打った方がいい、というところに残念ながら引っ張られてしまって、その競争に巻き込まれてしまった部分がある」と語る。
今後の課題について、富川氏は「グローバル企業なので、今後の課題は海外です。今1週間遅れぐらいに翻訳版も出してるんですけどあまりにも視聴回数が少ないんです」と明かす。「もっと海外の人に知ってほしいとか、日本にいる外国人の人たちに見てほしいっていうのはありますね。やっぱり、知ってもらわなきゃ意味がないので」と締めくくった。



