終戦後、歌舞伎町周辺で移転を繰り返しながら営業してきた食事処「ひょっとこ」は、70年にわたり愛され続けている。現在のスタイルはランチタイムと18時から翌2時までの営業で、食事処でありながら酒も楽しめる。客層はヤクザやホスト、水商売の女性、客引き、近隣の飲食関係者が多かったという。
名物「のり弁」の誕生と大物芸能人
名物の「のり弁」を考案したのは、店主の茂さん。最初は近所のキャバレーやクラブから時々注文が入る程度だったが、近くの雀荘に来ていた北島三郎さんが注文するようになり、徐々に人気に。コマ劇場で公演がある際は、北島さんや由美かおるさんらが楽屋弁当として注文するようになった。由美さんは味を気に入り、店にもよく来店していたという。
のり弁には松、竹、梅の3種類がある。松は2160円(税込み)、竹は1700円、梅は1380円。いずれも魚や玉子焼き、煮物、マカロニサラダ、漬物など多くのおかずが入り、竹にはエビやウインナー、松にはさらにクリームコロッケや多種の副菜が加わる。北島さんらはもちろん松を頼んでいた。
ヤクザの「最後の晩餐」エピソード
松の弁当にはこんなエピソードもある。佐藤文江さんによると、「ヤクザ屋さんの子分の方が、親分が食べる松の弁当をよく買いに来ていた。いつか自分も偉くなって松を食べたいと思っていたそうで、後になって『やっと食べられるようになりました』って来てくれたことがありました」という。
また、血の気の荒い客も多かったが、気の強いおばあちゃまに叱られることを恐れて、店内で揉め事はなかった。代わりに店の外で取っ組み合いをし、血だらけになって戻ってきた客もいたそうだ。



