被災地へのおもちゃ支援、バンダイが「ガシャポン備蓄」で子どもの心をケア
被災地おもちゃ支援、バンダイがガシャポン備蓄で心ケア

地震や台風などの自然災害が頻発する日本。被災地支援では水や食料などの「衣食住」が最優先される中、玩具メーカーのバンダイは、被災地の子どもたちに向けてカプセル玩具の「災害時こども支援おもちゃ」(以下、支援おもちゃ)を備蓄・提供する独自の活動「災害時こども応援活動」に取り組んでいる。ライフラインの確保が急務となる中、被災地へのおもちゃ支援の必要性については賛否が分かれる可能性もある。だが、子どもたちの「心のケア」も欠かすことのできない重要な支援だ。被災地にあえておもちゃを送る決断に至った真意について、同社の青木優さんに話を聞いた。

全社員のアイデアから生まれた被災地支援

バンダイでは2020年頃、災害が多かった時期に「会社として困っている被災地の子どもたちに何かできることはないか」と全社員からアイデアを募集したのが始まりだ。当初はガシャポンを積んだ移動トラックで被災地に赴き、子どもたちに回して楽しんでもらう企画が有力だった。しかし、子ども支援活動を行う公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンに相談し、被災地のリアルな状況を聞いた。発災直後は交通機関が麻痺しており立ち入り規制もあるため、簡単には現地に入れないことや、被災地の現状を詳細に把握していない同社が赴くことで迷惑になったり、二次災害を招いてしまっては本末転倒になる。そこで、災害が起こる前の段階でできることを考え、自治体などに備蓄品として提供する方向性に変更した。

被災地の環境を考慮したおもちゃの仕様

避難所はパーソナルスペースが非常に狭く、年齢層もさまざまだ。そのため、避難所で安心して遊べるおもちゃとは何かをセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンのアドバイスを受けつつ検討した。音が出るものや大きなスペースを必要とするものは周囲への配慮が必要となるため、最終的には省スペースで音が鳴らず、柔らかく安全性にも配慮した「エアーマスコット人形」や「スクイーズ人形」を採用した。「エアーマスコット人形」は空気を抜けばコンパクトにたたむことができ、避難所生活でも保管しやすい。スクイーズ人形は柔らかい素材でできており、ぎゅっと握ることで気持ちを落ち着かせる効果も期待される。

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カプセルに込めた「起き上がる力」と被災地での反響

支援おもちゃのキャラクターデザインは「太鼓の達人」のキャラクターを描いたデザイナーの横尾有希子さんが手掛けた。あえてガシャポンカプセルという形状を生かし、「カプセルを閉じて身を守り、転んでも、起き上がることができるように!」という想いを込めている。

令和6年能登半島地震などで緊急支援を行った際、子どもたちはカプセルを見て「あ、ガシャポンだ!」と喜び、「何が出た?」「こんなの出たよ!」と友だち同士や大人たちと見せ合い、コミュニケーションを生む役割を果たした。おもちゃがきっかけで子どもたちが笑顔になり、交流の輪が広がったという報告は、同社にとって嬉しいものだった。

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衣食住と同じくらい大切な「心のケア」と自治体備蓄の壁

発災直後に東京から支援物資を届けるのは難しいため、同社は事前に市区町村などの各自治体へ声を掛けて備蓄してもらい、発災時の配布タイミング等の判断は自治体に任せる体制を取っている。しかし、自治体によって備蓄スペースは異なり、災害時には水や食料などの衣食住が最優先されるため、支援おもちゃの備蓄スペースの確保にはハードルが高い。災害時の子どもの「心のケア」の重要性について、まだまだ認知や理解が十分でない現状において、支援活動の輪をいかに広げていくかは大きな課題となっている。

青木さんは「確かに被災時には衣食住の確保が最優先されますが、それらと同じくらい、あるいはそれらを補う形での『心のケア』も、代えがたい重要性を持っていると感じます。おもちゃを通じて『心のケア』を行うことで、子どもが普段の生活を取り戻し、笑顔になれば、周りにいるご高齢の方や大人たちも幸せな気持ちになれます」と述べている。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの話では、衣食住と同じくらい子どもが早く普段の精神状態に戻るためのサポートが重要であることは、まだあまり知られていないという。

安全への徹底したこだわりと二次的活用

備蓄品は使用期限を生産年から5年に設定し、年に1回、自治体の協力のもと、同社独自基準での定期品質検査を実施している。いざ災害時に開けたおもちゃが壊れていたり、遊べないことで子どもたちを悲しませることは絶対に避けなければならない。安全を第一に考え、けがにつながらないよう品質管理を行っている。

また、被災地ではおもちゃの「二次的活用」も求められている。同社は同梱しているミニチラシにキャラクターのイラストや紹介を盛り込むことや、セーブ・ザ・チルドレンから「被災地では運動不足になりがち」と聞いたことから、支援おもちゃを使って周りの人とコミュニケーションを取りながら運動にもなる遊びを考え、動画を作成し、二次元コードをチラシに載せて動画へ誘導するなど、ゴミとして捨てず何度も楽しく見たくなるような工夫を盛り込んでいる。

バンダイは「こどもたちの未来のために」という想いのもと、さまざまな社会活動に取り組んでいる。この活動を通じて、全国の自治体へ備蓄が広がっていくことを目指して地道に活動を続けていく。

非常時において「心のケア」は後回しにされがちだ。しかし、おもちゃがもたらす安心感や笑顔は、子どもたちだけでなく周囲の大人をも明るく照らす力を持っている。困難な状況でも「自ら起き上がれるように」という願いが込められたバンダイの支援おもちゃ。安全性にも徹底して配慮されたこの取り組みが全国の自治体へ広がり、万が一の際に子どもたちの心を守る確かな「お守り」となることが期待される。