年齢を重ねればシワが増えるのは自然なこと。それでも、多くの人はシワを「できれば増やしたくないもの」と感じます。なぜ私たちは、年齢を刻んだ証でもあるシワをネガティブに捉えるのでしょうか。実はその背景には、人類が長い時間をかけて獲得してきた「生殖」と「長寿」をめぐる進化の仕組みが関係しているといいます。
『科学が解明した 悩んでもしょうがないことリスト』(石川幹人/サンマーク出版)から抜粋して紹介します。
シワは「生殖年齢を過ぎた」という指標
年をとるとシワが増えるのは、肌の細胞が、弾力性を形成する仕組みを失ってしまうからです。その原因には、老化(細胞分裂回数の限界など)や外的要因(紫外線や摩擦による皮膚細胞の破壊)があげられます。
とはいえ、なぜシワが否定的にとらえられているのでしょうか。仙人のようなシワシワの老賢人がみんなから敬われている光景を想像すれば、年齢を刻んだ証としてのシワは、ひとつのステイタスになってもいいように思います。
シワが否定的にとらえられる理由は、「生殖年齢を過ぎている」という指標になってしまうからです。生物は次の世代をより多く残すようにその遺伝情報が進化するので、生殖可能な状態を敏感に察知します。パートナーを選ぶときには、子どもをもうけられる状態の相手を選んだほうが次の世代が残りやすいので、そうした相手に魅力を感じる遺伝子が引き継がれるのです。
高齢者の知恵が集団を支えた
こうした生物進化の原理を再三聞くと、「子孫を残すのがそんなに大事なのか」という反発心もわいてきます。ご安心ください。人類では、新たな事情も発生しました。狩猟採集時代の協力集団では、子どもをもうけられない高齢者の貴重な役割が生まれたのです。
狩猟採集に使う道具を作成するノウハウや、協力集団をよりよく運営できる知恵を年長者が提供するようになりました。これにより、生殖年齢を過ぎた高齢者が生き残る「集団としての意義」が出てきたのです。結果として、人類において長生き遺伝子が特徴的に進化しました。長生きの人が多い集団ほど、集団の維持が効率よくできるからです。
おばあちゃんが長生きする進化的な理由
とくに養育の熟練者である年長の女性の役割は大でした。その頃の協力集団では、ある程度の集団保育をしていたと考えられています。若い女性たちが採集に出かけている間、年長の女性は居住拠点に残って子どもたちの面倒を見ているという役割分担が、とても効果的なのです。
現在、男性に比べて女性のほうが長生きである事実は、このような過去の経緯があったがゆえに、女性のほうで長生き遺伝子がとくに進化した結果ではないかと見られています。
こうして人類は、子孫を残すのに加えて、知識や文化を集団として継承していくことにも意義を見いだしたのです。しかし、考えてみると、それももとをただすと、集団として子孫をよりよく残していく手段であったわけです。人類は、高度な文明を築き、伝承する特別な動物種になったのですが、それも結局は「子孫を残す仕組み」だとすれば、まだまだ動物を超えられてはいないのかもしれませんね。



