フアンCEO、日本への熱い思いを語る35分間
2026年7月16日、エヌビディア創業者兼CEOのジェンスン・フアン氏は東京都内で過密なスケジュールをこなし、夜には「NVIDIA Japan AI エコシステムレセプション」に出席。約25分のスピーチ後、報道陣の囲み取材に応じ、当初15分の予定を大幅に超える35分間にわたり、日本への思いやAIの未来について語った。
セガへの恩義と「Japan is back」宣言
フアン氏はスピーチで、創業期に倒産の危機から救ってくれたセガとの絆を強調。「私が33歳の時、セガ向け技術開発に行き詰まり、会社は倒産寸前だった。セガの入交昭一郎副社長(当時)のもとへ行き、正直に打ち明けた。『私たちの技術はダメだった。でも会社を存続させるために、お金が必要だ』と。彼は私たちを信じて投資を決めてくれた。あの投資がなければ、今日のエヌビディアは存在していない」と述べ、感極まる場面もあった。
続けて「今日は日本にとって大きな1日だ。『ジャパンAI』の始まりの日だからだ。日本の製造業と産業用ロボットは驚くほど優れているが、1つ欠けていた技術があった。それが『フィジカルAI』だ。重力や衝突、因果関係を理解する知能を持ったAIだ。今、われわれはその技術を手にしている。日本がかつてエヌビディアを救ってくれたように、今度はわれわれが日本に貢献する番だ。次世代のAIと産業の中心はロボットと自動化。今は日本の時代であり、企業や経済が好調な時こそ投資すべき。日本には必要な条件がそろっている。さあ始めよう。Japan is back!」と宣言した。
フィジカルAIプロジェクトと日本の産業界
この日、フアン氏は虎ノ門で富士通、ファナック、川崎重工業、安川電機の首脳陣との昼食会に参加。とんかつを食べながら懇談し、その後、経済産業省が主導するフィジカルAIプロジェクトのキックオフイベントにも出席した。レセプション会場には、スーパーコンピューター「富岳」の開発総責任者である松岡聡氏(理化学研究所計算科学研究センター長)をはじめ、科学者、スタートアップ起業家、政府関係者が集まった。
スピーチの終盤、フアン氏は主賓のあいさつを待たずにグラスを掲げて「乾杯!」とフライング。続いて登壇した松本洋平文部科学大臣が「さすが世界トップの企業、決断と行動が早い」と述べると、会場は笑いに包まれた。
記者との一問一答:日本の未来とAI
囲み取材では、30人以上の記者に対し、フアン氏が自ら進行役を務めながら質問に答えた。最初の質問で中国への半導体出荷の可能性を問われると、「日本の話をしよう。もっとちゃんとマナーを守ろう。あとであなたに戻るけど、その時はもう少しよい質問をしてほしい。ここは日本だ。敬意を払い、日本のためによい仕事をしよう」とたしなめ、日本への集中を促した。
NECやソフトバンク、ホンダなどとのコンソーシアムについて問われると、フアン氏は「日本の企業は世界最高の製造技術を持つ。フィジカルAIはロボットに知能を与え、製造業を変革する。エヌビディアはGPUとAIプラットフォームでそれを支える」と述べ、協業の重要性を強調した。
また、お気に入りのラーメン店についての質問には「秋葉原にある店だ。日本に来るたびに必ず訪れる」と笑顔で答え、親しみやすい一面を見せた。
エヌビディアの日本戦略と今後の展望
フアン氏は「日本の限界を決めるのは人口でなくなる。AIとロボットが生産性を飛躍的に向上させる。半導体は世界最大の産業になる」と予測。日本政府が進める半導体戦略やAI関連投資についても「日本は正しい方向に進んでいる。エヌビディアはパートナーとして全力で支援する」と語った。
今回の来日でフアン氏は、日本がAI時代において重要な役割を果たすとの確信を改めて示した。エヌビディアのGPUはAI処理の基盤として世界中で需要が高まっており、日本の製造業との連携は、フィジカルAIの実用化を加速させる鍵となる。



