5G普及の現状:期待と現実のギャップ
5Gの商用サービス開始から数年が経過したが、その普及ペースは当初の想定を下回っている。総務省のデータによれば、2024年3月時点での5G契約数は約8000万件で、全携帯電話契約に占める割合は約20%にとどまる。これは、2019年のサービス開始当初に政府が掲げた「2023年度末までに人口カバー率90%」という目標を大きく下回る数字だ。
普及の壁:コスト増とキラーアプリ不在
普及が進まない理由として、まず基地局の整備コストが挙げられる。5Gは4Gに比べて基地局のカバー範囲が狭く、同じエリアをカバーするために多くの基地局が必要となる。NTTドコモの担当者は「5G基地局の設置コストは4Gの約1.5倍。特に地方での採算性が課題」と語る。また、消費者にとって5Gならではのメリットを実感できる「キラーアプリ」が登場していないことも要因だ。動画視聴やゲームなど、現状の4Gでも十分な体験ができるサービスが多く、5Gにアップグレードする動機が弱い。
企業向けサービスが牽引役に
一方、企業向けのB2B領域では5Gの活用が進んでいる。製造業では、5Gを活用した遠隔監視や自動搬送ロボットの制御が実用化。KDDIの事例では、工場内の5Gネットワークにより、作業効率が20%向上したという。また、建設業界では、5G対応のドローンを使った測量が普及しつつある。専門家は「今後はスマートシティや自動運転など、社会インフラへの応用が普及の鍵を握る」と指摘する。
今後の展望:6Gへの布石
5Gの普及が遅れる中、次世代規格「6G」の研究開発が加速している。総務省は2025年度から6Gの実証実験を開始し、2030年代の実用化を目指す。しかし、5Gの投資回収が進まないまま6Gに移行すれば、通信事業者の経営を圧迫する可能性がある。東京大学の教授は「5Gの普及を促進するためには、官民連携によるコスト削減と、ユーザーに訴求するサービスの創出が急務」と訴える。
まとめ:5G普及には時間が必要
5Gの普及には、技術面だけでなく、経済性やユーザーニーズの面でも課題が残る。当面は、企業向けサービスを中心に需要を取り込みながら、消費者向けには段階的な浸透が進むとみられる。政府と通信事業者は、2025年以降の5G人口カバー率向上に向けて、新たな戦略を打ち出す必要がある。



